家族信託のデメリットと様々な活用法

家族の輪

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しがらみゼロのFPブロガーMisaki(@fpmisaki2)です。

 

家族が認知症になってしまったとき、

デッドロックと呼ばれる、資産が使えない状況に陥ってしまいます。

 

そういう危険に、事前にそなえるための方法として、注目されているのが「家族信託」です。

 

成年後見制度よりも柔軟性が高く、元気なうちから死後に発生する相続まで網羅することも可能となる、非常にメリットが多い制度であることは、お伝えしてきたとおりです。

 

ですが、当然全てのことがらにはメリットとデメリットが存在します。

デメリットもしっかり見つめて行きましょう。

 

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「家族信託」は万能か?

何でも契約に盛り込めばかなえられるというわけではなく、どうしても、信託にはできないことというものがあります。

 

受託者には「身上監護権」は、与えられない

ちょっと分かりにくい用語が出てきましたね。

身上監護権とは、介護保険や病院などの「身の上」の手続きをすることなのですが、

  • 病院に関する手続き
  • 介護保険に関する手続き
  • 施設入所や施設対処に関する手続き

などがあげられます。

 

介護施設へ入所するときには、本人の名前で契約をする必要がある場合があります。

そういう時には、「身上監護権」がある成年後見人でなければ、契約を結ぶことができないのです。

 

未成年後見人の指定、子の認知などの身分行為はできない

遺言であれば、未成年後見人や未成年後見監督人を指定したり、婚外子の認知などを行うことができますが、このような「身分に関すること」については、家族信託で行うことはできません。

 

遺言でできることの全てをカバーしているわけではないため、該当する場合には注意が必要です。

 

遺留分減殺請求の対象となる可能性がある

まず、遺留分減殺請求について、簡単に確認しておきましょう。

基本的には、「遺言」によって、財産をだれに引き継ぐかを指定することができます。

本人が所有していた財産を、だれに渡そうが自由! という考え方です。

 

ですが、例えば、「全財産を愛人に譲る」なんていう遺言だったとしたら、どうでしょう?

残された家族は、精神的なショックに加えて、生活に困ってしまう可能性がありますよね。

 

そのため、配偶者や子などが最低限受け取れる相続財産の枠を決めておき、それを下回るような遺言があったら、「受け取り枠分はよこしなさい!」という請求をすることができるようになっています。

 

これを、遺留分減殺請求権といいます。

 

遺留分の計算方法

  • 直系尊属(父母など)だけが相続人の場合 → 基礎財産の3分の1
  • それ以外の場合 → 基礎財産の2分の1

が、遺留分の総額となります。

 

そして、「法定相続分」と呼ばれる、相続の割合がありますので、それに応じて配分します。

配偶者と子の場合: 配偶者2分の1、子2分の1(複数人いれば、均等割り)
配偶者と直系尊属の場合: 配偶者3分の2、直系尊属3分の1(複数人いれば、均等割り)

例1)配偶者と子2人の場合

 配偶者の遺留分=1/2(遺留分総額)✕1/2(法定相続分)=1/4

 子の遺留分=1/2(遺留分総額)✕1/2(法定相続分)✕1/2(人数頭割り)=1/8

 

例2)配偶者と父母2人の場合

 配偶者の遺留分=1/2(遺留分総額)✕2/3(法定相続分)=1/3

 父や母の遺留分=1/2(遺留分総額)✕1/3(法定相続分)✕1/2(人数頭割り)=1/12

 

ちなみに、兄弟姉妹には、遺留分減殺請求権はありません

 

 

家族信託では、自分の死亡後に残った財産の引継ぎ先を指定できます。

 

ですが、遺留分減殺請求の対象となる可能性があります。

一方、「信託財産は切り離される」という性質を持つことから、遺留分減殺請求の対象とならないという見解もあり、意見が分かれるところです。

 

意見が分かれる・・・ということは、それによって相続時に争いの種(そして裁判沙汰)になる可能性がありますので、慎重な対応が必要です。

 

遺贈の減殺方法の指定はできない

もし、遺留分減殺請求がなされた場合、遺言では「どの財産から減殺請求の対象にするか?」という順番を決めることができるのですが、家族信託では行うことができません。

 

 

このような、カバーできない部分については、成年後見制度遺言を利用する必要があります。

 

また、家族信託は、あくまでも信託対象とした財産に限られますので、それ以外にも財産がある場合には、遺言により引継ぎ先を決めておく必要がありますね。

 

 

「家族信託」のデメリット

それでは、家族信託のデメリットを見ていきましょう。

 

信頼できる受託者がいるか、正しく自分の想いが伝えられるか、他の親族の理解が得られるか

家族信託では、財産は「受託者」名義となります。

そのため、自分の想いをしっかりと理解し、安心して託すことができる家族・親族がいるかどうかが最大のポイントとなります。

託される人はもちろんなのですが、その他の親族も理解・納得をしていることが重要です。

例えば、託された本人は理解していても、その配偶者にうまく伝わっていないと、問題が起きることがありますね。

 

家族信託は、将来の争いを防ぐために利用するはずです。

受託者を決めたことにより、家族間に溝ができてしまうようではいけません。

 

家族信託を行う目的、家族に対する想いを明確にして、広く親族の理解が得られる状態を作りましょう。

 

節税効果は期待できない

家族信託をしたところで、それ自体には節税効果はありません。

 

生前贈与や不動産の整理、事業承継への対策など、どのような節税対策をするか?

については、別に青写真を描いておき、それが実行できるような環境を家族信託で整えるというイメージを忘れないでください。

 

対応できる専門家を探すのが大変

家族信託は歴史が浅く、まだ利用後20年、30年を経過したような事例がありません。

当然、弁護士・司法書士・税理士などの専門家でも、実務経験がない方が多くいらっしゃいます。

 

知識や経験が豊富な専門家を見つけることができるか? は重要事項です。

一般社団法人 家族信託普及協会のサイトで、「家族信託コーディネーター・専門士研修」を終了した専門家の名簿が公開されています。

 

こうした情報も参考にしつつ、公式ホームページ等でも情報収集をして、信頼できる専門家を見つけてください。

 

なお、知識や実務経験が豊富な専門家に、コンサルティングをしてもらうわけですから、当然報酬は高くなります。

 

相場としては、45万円~60万円くらいですが、財産の種類や総額によって異なりますので、一概には言えません。

決して、気軽に作成できるものではありませんね。

 

ですが、成年後見制度で毎月の報酬が発生し続けることを考えると、安心料も含めた費用対効果としては悪くないという見方もできます。

 

税務申告は煩雑になる

資産の一部または全部を信託財産に入れた場合、そこから年間3万円以上の収入がある場合には、信託計算書・信託計算書合計表を税務署に提出しなければなりません。

 

賃貸マンションなどを家族信託の対象にした場合、これに該当しますね。

 

長きにわたり、関係者は拘束を受ける

これはメリットの裏返しではありますが・・・

2次相続、3次相続まで決められるということは、何世代にもわたり資産処分に制限がかかるという見方もできます。

 

未来のことは、だれにも分かりません。

20年後には、家族を取り巻く状況が変わっている可能性もあります。

その場合には、争族に発展してしまうリスクを含んでいます。

 

 

 

いかがでしょうか?

デメリットの数が多く、どうしようかなぁと思われる方もいらっしゃるでしょう。

 

ですが、これらのデメリットの多くは、親族間で想いが共有され、経験豊富な専門家と一緒に組み立てていくことによって、解消されるものだと言えます。

 

得られるメリットとあわせて考えると、将来への対策として有力な候補になるのではないかと思います。

 

 

認知症対策以外にも「家族信託」が使える

認知症にスポットを当てて、家族信託の活用について紹介してきましたが、実は、他の事例でも有効活用ができます。

 

障害のあるお子さまがいる場合

障害があって、自分で財産管理をするのが難しいお子さまがいる場合、お子さまの将来が不安になることと思います。

 

  1. 委託者=夫婦
  2. 受託者=信頼できる親族
  3. 受益者=障害を持ったお子さま

として家族信託を結んでおくことで、お子さまの将来に備えることが可能となります。

 

事業承継に活用する

経営者がお亡くなりになり、非上場株式の評価額が高い段階で相続が発生すると、受け継ぐ後継者は相続税の支払いが困難になってしまいます。

 

そのため、次世代に上手に事業を引き継ぐための「事業承継対策」は必須なのですが、その方法の一つとして、家族信託が使えます。

  1. 委託者=本人
  2. 受託者=本人
  3. 受益者=後継者

とする、自己信託(家族信託の一種)を行うことができるのです。

 

この方法だと、本人は受託者として引き続き株式の議決権が行使できます

一方、受益者は後継者ですので、株式を贈与することができます。

 

本人が亡くなったら、信託が終了するように定めておけば、死後は後継者が株式の議決権も取得し、完全に株式を取得することができます。

 

株価の評価は、贈与時の評価額となりますので、評価額が低いタイミングで家族信託契約を結ぶことにより、相続税対策も兼ねることが可能です。

 

教育資金の一括贈与を「家族信託」で行う

教育資金を一括で贈与する場合に、1,500万円までは非課税になるという制度があります。一般的には、信託銀行に管理を委託して行うのですが、その場合には当然手数料が発生します。

これを家族信託で行うことにより、銀行に支払う手数料が不要となります。

 

不動産の共有問題をカバーするために使う

共有不動産は、共有者全員が協力しないと売却ができませんので、共有者が不仲だったり、共有者が増えてしまったりすると、売りたい時に売れないという問題が発生します。

 

家族信託により、管理と処分の権限だけを共有者の1人に集約することで、不動産の塩漬けがおきないようにすることができますね。

 

これらは一例にすぎません。

さまざまな事例で、家族信託の活用が可能となっているのです。

 

おわりに

家族信託は、活用の幅が広く、有効に使うことができるため、今後は多くの方々が利用するようになるものと思います。

 

将来への対策は、検討を早めに始めるほど、その効果を高めることができます。

 

制度を利用するかどうかは、皆さまの自由ですが、「家族信託という制度がある」ということは、知っておくべき知識だと言えます。

 

 

お金の問題の根底にあるものは、持っている資産が多いかどうかというよりも、将来への不安感という側面が強いですよね。

  • 老後の資金は足りなくならないか?
  • ローンは払い続けられるのか?
  • 子どもを大学まで行かせられるのか?
  • 結婚して家族を養えるのか?

これらは全て、将来への不安と置き換えられます。

つまり、お金の悩みを軽減することは、将来への不安を解消することにつながるわけです。

 

家族信託は、将来への不安を軽減するために使える「手段のひとつ」であることを知っておいてくださいね。

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大空みさき
はじめまして、大空みさきです。

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ふつうの会社員だった私が、生命保険の値上がり宣告をきっかけにFPの資格を取って、たどり着いた結論です。

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コメント一覧
  1. マンション管理士

    私もmisakiさんと同様、今年2月11日に一級FP技能士実技試験を受けました。見慣れない家族信託に関する設例に最初は戸惑いました。ただ、試験数週間前の新聞で家族信託が取り上げられており、たまたまその記事を読んでいたので、メリットデメリットぐらいは無難に答える事ができました。実技試験対策も非常に親近感がわき、楽しく拝見させていただきました。受験当日の体験記事も楽しみにしております。

    2018/03/13(火) 15:00:37
    • fp-misaki

      コメントをいただきまして、ありがとうございました。同じく2月11日の試験を受けられたとのこと、結果が出るまで不安ですよね。
      お互いに良い結果であることを、心から願っています。
      結果が出る前なのに・・・という不安はありつつも、学科に合格した方にとっては直近の情報が一番知りたいだろうと思い、思い切って書かせていただきました。
      せっかく勉強したことを何かの役に立てたいと、四苦八苦しながら始めたブログです。
      もしよろしければ、今後もご覧ください!

      2018/03/13(火) 19:31:51
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