買ったときには、一生モノのつもりで買ったマイホーム。
それでも、さまざまな事情により、住み替えのために売却することはありますよね。
お子様が独立した、離婚したetc
生活スタイルの変化に応じて、自宅を売却して住み替えようと思ったとき、しっかり把握しておきたいのが税金の特例です。
少なくとも、特例の有無や特徴くらいは知っておかないと、使えるものも使えなくなっちゃう!
不動産を売却して、儲かった場合と損した場合。
それぞれの状況に応じて、使える特例は異なります。
特例は使わなきゃソン!
それは間違いないのですが、いくつかある特例のうち、何を選ぶかも大きなポイント。
自宅の売却を検討されている方は、かしこく特例を使うためにも、最低限の知識を身に付けておきましょう!
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不動産売却時の「譲渡所得」はどうやって計算するの?
個人が不動産を売却した場合には、所得税と住民税の課税対象となります。
所得というものは、10種類に場合分けして計算されるのですが、不動産を売却した場合、その結果として得られる所得は、譲渡所得というカテゴリーに分類されます。
ということは、4,000万円で自宅を売ったら、4,000万円に対して税金がかかちゃうの・・・
自宅を買う時にもお金はかかっているし、売るのに必要な経費もあるからね。
譲渡所得の計算式は、
譲渡収入-(取得費+譲渡費用)
となっていて、ざっくり言えば、不動産を売ったことによって儲かった分があれば、その儲けに対して課税しますよ!という考え方です。
あまりにも古すぎて、いくらで買ったかよくわかんないんですけど💦
先祖代々受け継がれているとか、事情により実際の取得費が分からない場合には、譲渡収入の5%を取得費とすることができます。
4,000万円で売れた不動産であれば、4,000万円×5%=200万円ですね。
実際の取得費用が、譲渡収入の5%より低い場合には、譲渡収入の5%を取得費とすることができます。
150万円で買った不動産が4,000万円に跳ね上がって売れちゃった!
なんていう場合でも、取得費は200万円として計算してOKということです。
もうひとつの譲渡費用というのは、不動産を売るために支出した費用のことです。
- 仲介手数料
- 測量費
- 売買契約書の印紙代
- 更地にして売却する場合の取り壊し費用
などが当てはまります。
4,000万円で売れた自宅で、購入時費用が分からず、譲渡費用が100万円かかった場合は、
譲渡収入4,000万円-(取得費200万円+譲渡費用100万円)=譲渡所得3,700万円
4,000万円で売れた自宅で、購入時費用が3,000万円、譲渡費用が100万円かかった場合は、
譲渡収入4,000万円-(取得費3,000万円+譲渡費用100万円)=譲渡所得900万円
このように、売れた値段は同じでも、譲渡所得は大きく変わってくるのです。
まずは、この譲渡所得がいくらになるのか、プラスになるのかマイナスになるのか、しっかりと押さえておくのがスタートラインです!
譲渡所得がプラスかマイナスかで、使える特例は変わる
ここは混乱しがちなポイントなのですが、譲渡所得がプラスになる場合に受けられる特例と、譲渡所得がマイナスになった場合に受けられる特例は異なります。
まずは、譲渡所得がプラスになるかマイナスになるかをしっかり確認したうえで、どの特例が選べるのかを考えて行きましょう。
譲渡所得がプラスの場合
つまり、 譲渡収入-(取得費+譲渡費用)>0 ですね。
この場合に使える可能性がある特例が、3つあります。
3,000万円の特別控除
条件に当てはまれば、さらに3,000万円の特別控除が受けられるというものです。
つまり、譲渡所得が3,000万円までなら、税金がかからなくなるということですね。
所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
通常、5年以上所有していた不動産の譲渡所得にかかる税率は、20.315%です。
ですが、条件を満たしている場合、譲渡所得が6,000万円以下の部分にかかる税率は14.21%に軽減されるというものです。
この特例は、3,000万円特別控除とセットで使えます。
3,000万円特別控除を活用しても、まだ譲渡所得が発生してしまう・・・という方でも、10年超の保有期間があれば、税率は下がるという仕組みです。
特定の居住用財産の買換え特例
10年以上居住している住宅を売って、新しく買い替える場合には、条件を満たせば適用できる特例です。
今持っている家を売却したときの金額(譲渡価額)よりも、新しく買った家の金額(取得価額)の方が高ければ、課税されないという仕組みです。
譲渡価額>取得価額 差額分だけ課税される
譲渡価額≦取得価額 課税されない
ただし、注意が必要なのは、この制度は課税の繰り延べだという点です。
”今” は課税されないけれど、新しく買った家を売却するときの譲渡所得を計算するときには、先送りした分が計算に含まれてしまうという仕組みです。
なので、この特例を選んだ方がお得になる方は、ごく限られた条件の方となります。
どの特例の条件もクリアしていたとしても、全ての特例を同時に使うことはできません。
1(3,000万円特別控除)+2(軽減税率特例)
3(買換えの特例)
この2パターンのうち、どちらかを選択することとなります。
譲渡所得がマイナスの場合
つまり、 譲渡収入-(取得費+譲渡費用)<0 ですね。
この場合に使える可能性がある特例が、2つあります。
そしたら、譲渡損が出た場合の特例も適用できるのでは・・・
残念ながら、そこまでの優遇措置はありません。
あくまでも、特例を適用する前の状態で、プラスになるかマイナスになるかによって、選べる特例が変わってくるというお話しですね 😉
それを踏まえて、2つの特例を見て行きましょう。
居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
長い&漢字が多すぎて、頭が痛くなってきましたよね。
もう少し分かりやすいネーミングはできないものだろうか・・・と思っちゃいます💦
売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている住宅を売って、新しく買い替える場合に、条件を満たせば適用される特例です。
買い替えた結果、譲渡損失が出た場合には、その損失を翌年以降3年間にわたって、給与所得などのプラス分と合算する(=損益通算)ことができます!
譲渡損失が1,000万円出たとしましょう。
給与所得が年間400万円の方であれば、
1年目 -1,000万円+400万円=-600万円
給与天引きで先に支払っていた税金が、全額戻ってくる!
2年目 -600万円+400万円=-200万円
給与天引きで先に支払っていた税金が、全額戻ってくる!
3年目 -200万円+400万円=200万円
給与天引きで先に支払っていた税金が、一部分戻ってくる!
こんな感じで、税負担が軽減されます。
居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
さっきと同じじゃないの・・・
いえいえ、よーく見ると「買換え」が消えています。
売った後に買い替えをしていなくても、条件に当てはまれば、譲渡損失が出た場合には、その損失を翌年以降3年間にわたって、給与所得などのプラスと合算する(損益通算)ことができます!
ただ、損失として計上できる限度額の考え方が、買い替えの場合とは少し異なります。
繰越控除等限度額=住宅ローン残高-譲渡価額
4,500万円で買った家(住宅ローン残高4,000万円)を3,000万円で売ったとしましょう。
譲渡損失は、3,000万円-4,500万円=-1,500万円ですが、
住宅ローン残高4,000万円-譲渡価額3,000万円=-1,000万円となりますので、譲渡損失は-1,000万円として計算していきます。
3,000万円特別控除について、詳しくみていこう!
これが、一番耳にすることが多い特例だと思います。
居住用財産を売った場合には、譲渡所得を計算するときに、さらに3,000万円を特別控除しますよ!という特例ですね。
4,000万円で売れた自宅で、購入時費用が3,000万円、譲渡費用が100万円かかった場合、
譲渡収入4,000万円-(取得費3,000万円+譲渡費用100万円)
=譲渡所得900万円>0円
でも、さらに3,000万円までは控除しますので、譲渡所得は0円となります。
3,000万円をさらに控除した結果、マイナスになる場合には、譲渡所得は0円になり、不動産の売却に対する税金はかからないということになりますね。
マイナスだから、その分、他の給与所得と損益通算しちゃう・・・なんてことには、さすがになりませんが、それでも、かなり有利な特例だということが分かります。
この特例の特徴は、長期保有していなくても受けられるということ。
多くの特例は、5年以上とか10年以上とか、所有期間のしばりがありますが、3,000万円特別控除は期間の制限がありません。
ただし、3,000万円特別控除の適用を受けるためには、細かな条件があります。
自宅を売却する際には、条件を理解したうえで売却計画を考えていくことが大事です。
- 自分が住んでいた家屋であること
- 転居した日から3年を経過した年の12月31日までに売却していること
- 居住用の家屋と土地を一緒に売却していること
- 災害によって滅失した居住用家屋の場合には、その敷地を居住されなくなった日から3年を経過した年の12月31日までに売却していること
- 売却するために、居住用家屋を取り壊した場合には、その土地の譲渡契約がその家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、その家屋に居住しなくなった日からから3年を経過した年の12月31日までに売却していること(取り壊した後の土地を貸付等に使用していたら不可)
- 売却先が第三者であること(譲渡者の配偶者、直系血族、生計を一にする親族などの特別な関係にある場合は不可)
その他にも、店舗兼住宅の場合や住まいの敷地の一部を区分して売却した場合など、状況によっては細かな条件が設定されています。
国税庁のホームページに、特例チェックシートが用意されているので、こちらを使ってしっかり条件を確認してくださいね。
ちなみに、この特例は3年に一度しか使えません。
前年、前々年に同じ特例を受けていないことも条件となります。
譲渡所得がプラスの場合、どの特例を選ぶべきかは、慎重に判断しよう!
譲渡所得がプラスになった場合には、
1(3,000万円特別控除)+2(軽減税率特例)
3(買換えの特例)
の2パターンのうち、どちらかを選択することとなります。
ただ、もう一つ忘れてはいけないポイントがあります。
実は、3,000万円特別控除や買換えの特例を受けた場合には、住宅ローン控除を受けることができなくなります。
住まいを買い替えた場合、新たに住宅ローンを組んでいることが一般的ですよね。
住宅ローン控除を受けた場合、条件を満たしていれば、借入金の年末残高×1%分が、10年間にわたって、所得税から引かれます。
各年の控除上限額があります(一般住宅:40万円、認定住宅50万円)ので、10年間での最大控除額は、一般住宅で400万円、認定住宅で500万円となります。
2019年10月1日~2020年12月31日までに入居した場合には、特例として+3年間控除が受けられます。
消費税が10%に増税されたので、その分の軽減策ということです。
この場合、10年間での最大控除額は、一般住宅で480万円、認定住宅で600万円となります。
住宅ローン減税も、なかなか大きな節税効果がありますので、所得の状況によっては、3,000万円特別控除の権利を放棄してでも、住宅ローン減税を受けた方がいい場合があります。
両方のパターンを計算してみて、比較してから決めた方がいいでしょう。
後から後悔することになってはいけません。
特例の適用が受けられるかどうか、そのうえで、どちらを選ぶのがよりお得かについては、税理士や最寄りの税務署へ相談してみましょう!
まとめ-ある程度の知識は身に付けてから、専門家へ相談しよう
税に関することは細かい要件が多く、それぞれの抱えている状況に応じてよりよい対処方法が変わってきます。
そのため、最終的には専門家へ相談をしなければいけない場面が出てきます。
そのときに忘れてはいけないのが、税務署の「税の窓口」の活用です。
税務署に相談なんて、勇気がいる・・・と思うかもしれませんが、無料で1年中相談可能なありがたい場所です。
きちんと納税をしようと考えている人に対しては、税務署は怖い場所ではありません(笑)
電話で匿名相談をすることもできますし、
事前に予約して、個別相談を受けることも可能です。
2月・3月の、税務署が忙しくなる時期を避けて、早めのタイミングで相談してみましょう。
ただし、質問する内容をまとめるためにも、基本的な仕組みや、どんな制度があるかなどは、知っておく必要があるのです。
税務署に質問してみたうえで、さらに相談が必要だと感じたら、不動産の税務に強い税理士を探してみましょう。
税理士も得意分野が異なりますので、相談したい内容に強い(実績がある)方を探すのが大事ですね。
不動産の売買には大きなお金が動きますので、しっかり節税できたかどうかで大きな差が出てしまいます。
しっかり情報収集して、ベストな方法を選びましょう!
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