しがらみゼロのFPブロガーMisaki(@fpmisaki2)です。
2018年1月に、厚生労働省が副業・兼業の促進に関するガイドラインを出したのはご存知でしょうか。
ざっくり言えば、「副業を希望している人も増えてきているし、労働者のスキルアップにもつながるんだから、労働者の希望に応じて認める方向で検討してよね!」と企業に対して要望しているものです。
厚生労働省では、もともとモデル就業規則というものを提示していたのですが、そのモデルでは、今までは「副業・兼業は原則禁止」とされていました。
ところが、このモデル就業規則も、こんな感じで改定されています。
第14章 副業・兼業 より抜粋
第67条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
すごいですよね。
原則禁止だったものが、原則自由になっちゃいました。180度の方針転換です。
これから先、私たちの働き方は大きく変わっていく可能性が高まっています。
本業として勤めている会社の状況によるものの、サラリーマン × 副業 の2足のわらじでやっていく方は、どんどん増えていくことでしょう。
この合わせ技は、会社員としてのメリットと、個人事業主としてのメリットを両方得られる可能性を秘めていますので、うまく使えば、けっこうお得感があります。
さっそく副業を始めるぞぉ。
めんどうでも、避けて通れないのが税金の知識。
会社員なら、職場で勝手に天引きしてくれますが、副業を始めたらそうはいきませんね。
まずは、所得の種類と内容を、把握するところから始めてみましょう。
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税金を考えるうえで大事なこと。「収入」と「所得」は全く違う。
税金のお話をするときには、「収入」という言葉と、「所得」という言葉が出てきます。
ふだん確定申告をしていない場合、さらっと流しがちなのですが、実は全然違う意味なんです。
- 収入は、入ってきたお金すべてのこと。給与や賞与、年商、売上なんかが該当します。
- 所得は、収入から必要経費を差し引いたもの。つまり「もうけ」のことですね。
所得税や住民税は、「所得」に応じてかかります。
仮に、
- A社:年商100万円で、経費が50万円。
- B社:年商500万円で、経費が500万円。
だとすれば、A社はもうけの50万円に対して税金がかかるのに対し、B社は税金がかかりません。
このように、収入が多いかどうかではなく、所得が多いかどうかが、納税額の分かれ目です。
だからこそ、必要経費が多く計上できるかどうか、他の控除があるかどうかが、節税のカギになってきます。
所得の種類は10種類もある。副業するなら、雑所得&事業所得は、要チェック!
所得は、必要経費を除いた「もうけ」でしたね。
ということは、収入と必要経費を紐づけて、もうけが計算できるようにしなければなりません。
そこで、内容に応じて、所得は10種類に区分されています。
まずは、10種類をひととおり見てみましょう。
- 利子所得:公社債や預貯金の利子、貸付信託や金銭信託、公社債投信の収益の分配などから生じる所得。
- 配当所得:株式の配当、証券投資信託の収益の分配などから生じる所得。
- 不動産所得:不動産の貸付による所得。土地の賃借やマンション・アパートの家賃など。
- 事業所得:製造業、卸売業、小売業、サービス業、農業、漁業、自由業など、事業から生じる所得。
- 給与所得:給料・賞与などの所得。
- 退職所得:退職によって受ける所得。確定拠出年金の一時金も含む。
- 山林所得:5年を超えて所有していた山林を伐採して売ったり、立木のまま売った所得。
- 譲渡所得:土地、建物、株式、ゴルフ会員権、書画、骨董、事業用の固定資産などを売った所得。
- 一時所得:クイズの賞金、競輪・競馬の払戻金、満期保険金などの所得。
- 雑所得:公的年金等、非営業用貸金の利子、原稿料や印税、講演料などのように、他の9種類の所得のどれにも属さない所得。
でも、よく見ると、けっこう身近なものが多いのよ。
定期預金の利子なんかは、税金を払っている感覚がないかもしれませんが、最初から税金が引かれて私たちの口座に入ってきています。
他にも、もし、持ち家を売って「もうけ」が出たら、譲渡所得として税金がかかる。
生命保険が満期を迎えたときも、「もうけ」が出ていれば、一時所得として税金がかかる・・という具合です。
さて、もし会社員として働きながら、何か副業をする場合、その「もうけ」はいったいどれにあたるのでしょうか。
不動産経営をするのであれば、ちょっと話が変わりますが、いちばん可能性がありそうなのは、事業所得と雑所得です。
ところが、この2つの違い、なかなか分かりにくいんです。
なぜなら、明確な基準が定められていないから。
事業所得と雑所得は、どう違う? できることなら、事業所得で青色申告にしたほうがお得。
まずは、事業所得と雑所得の税計算上での違いについて、確認しておきましょう。
事業所得の青色申告には、特別控除が用意されている。
青色申告や白色申告って言葉は、聞いたことがあると思います。
このうち、青色申告を利用して、複式簿記で帳簿をつければ、なんと65万円の特別控除が適用されます。
カンタンに言えば、65万円までの収入なら、確実に税金0円です!
給与収入から、2~3割くらいは税金で持っていかれていることを考えると、なんてお得な制度なんでしょう。
ただし、青色申告はするけれど、単式簿記で帳簿をつけるという場合には、特別控除額は10万円に下がります。
もちろん、この特別控除以外にも、必要経費を差し引くことができちゃいます。
けっこうな節税が見込めますよね。
青色申告と白色申告の違いを簡単にまとめると、こんな感じになります。
白色申告は、事前承認手続きが不要だったりして、手間がかからない・・・と言われています。
ですが、2014年からは、帳簿をつけるのが義務化されたため、正直なところ手間の面では、たいした差がなくなっています。
複式簿記と聞くと、そんなのムリって思いますが、
今は会計ソフトが充実していて、確定申告に必要な計算書が簡単に作れるようになっています。
どうせ帳簿が必要なら、ソフトを活用して65万円の特別控除をGetした方がいいですね。
もちろん、ソフトの利用料は、必要経費として計上もできます!
事業所得の青色申告なら、赤字を3年間繰り越して、収入と相殺できちゃう。
事業をはじめて最初のうちは、収入< 必要経費 になってしまうことも多いでしょう。
そんなとき、この繰り越しルールが活躍します。
例えば、1年目は-50万円、2年目は20万円、3年目は30万円の事業所得だったとします。
白色申告では、2年目・3年目は所得に対する税金の支払いが発生しますが、青色申告をしていれば、1年目のマイナスの分と相殺されて、所得は0円。
つまり、3年間の税金が0円になります。
他にもいくつか特典があるのですが、この2つが使えれば、副業サラリーマンにとっては大きいですよね。
ちなみに、青色申告と白色申告で、どれだけ違うかを簡易シミュレーションできるサイトがあります。
興味がある方は、チェックしてみてください。
雑所得なら、20万円までは非課税というのは、間違いです。
このように、事業所得で青色申告すれば、節税面ではとってもお得です。
一方、雑所得になった場合には、特別控除や赤字の相殺はありません。
単純に、収入-必要経費に対して、課税されます。
それ、ちょっと誤解があるかな。
よく、雑所得は20万円まで税金がかからないと思われていますが、これは正確ではありません。
- 年間の給与収入が2,000万円以下
- 他に確定申告をするものが何もない(医療費控除、ふるさと納税などに注意!)
- 給与は1か所だけからしかもらっていなくて、雑所得などの合計が20万円以下
- 給与を2か所以上からもらっている場合は、副業分の給与と雑所得の合計が20万円以下
これに該当する場合には、確定申告を「省略」してもいいですよという話です。
省略した結果として、所得税を払わずにすみますが、決して誰でも非課税になるというわけではありません(まわりくどいですけどね)。
さらに、これはあくまでも所得税の世界の話。
住民税には20万円以下は申告不要というルールはないので、住民税の申告は別途しなければなりません。
副業が事業所得になるかどうかは、税務署次第。基準はあいまいだけど、現実には厳しい。
こうしてみると、何がなんでも青色申告にしたいって思いますよね。
事業所得はとっても魅力的なんですけど、副業の場合には、認められるためには、けっこうハードルが高いということは覚えておきましょう。
事業所得として認められるかどうかは、ケースバイケース。
最終的には税務署の判断となりますが、一般的に言われていることをまとめてみます。
収入規模が大きく、事業と認められるか
お小遣い稼ぎや、臨時収入狙いのレベルでは、片手間とみなされますので、事業としての認定は難しいです。
継続性と反復性があるか
取引を継続的に行っているか、収益の将来性があるかがポイントです。
投機性が高かったり、偶発性が高いものは、真逆の状態にありますので、ほぼ認められません。なので、FXなんかは難しいですね。
メインの所得とのバランスはどうか
生活の維持が、メインの所得に依存している場合は、厳しいでしょう。
趣味の延長ではないか、稼ぐ気があるのか
営利性や有償性があることも、事業かどうかの条件になります。
趣味の延長だったり、きちんと稼ごうとして運営しているかが怪しい場合にも、事業とみなされるのは厳しいです。
「好きを仕事」にレベルだと、認定されないことが多いですね。
リスクを負担しているかどうか
事業をするということは、設備や資金、人件費などの投資が伴い、それに対するリスクを背負っているものと考えられていますので、相当の労力を費やす必要があります。
ローリスクの場合には、「気軽だ」ととらえられることになり、厳しいようですね。
いかがでしょうか?
このような傾向を見る限り、会社員が給与収入をメインにしながら、プラスアルファとして、ブログの広告収入を得たり、FXなどのトレード系の収入を得たりする場合には、事業所得にするのは、なかなか難しい状況です。
ただ、最終的には、収益性や継続性など、その人が置かれている状態に応じて、ケースバイケースで決まること。
厳しいからとあきらめてしまわずに、少しでも可能性がありそうなら、お近くの税務署や、国税庁の相談窓口に問い合わせをして確認してみましょう。
全般的にあいまいな基準なので、何か所かに問い合わせをして感触を探ってみた方がいいかと思います。
使えるものは使った方がいいですからね。
収益が安定してきたり、大きくなってきたら、ぜひチャンレンジしてみてください。
まとめ-副業が広がってくるからには、会社員でも税金の知識を持っておくべき。
税金の話って、複雑だし、ややこしいですよね。
でも、もともと所得税は、「申告納税方式」と言って、納税者が自分で税額を計算して申告するものなんです。
会社が税金を計算して、徴収していることの方が、実は特殊な状況。
1つの会社に定年まで勤め続けるのが基本なら、会社に任せておけばOK! でよかったのですが、
これからは、副業や兼業、転職が当たり前になっていく可能性が高いです。
だからこそ、税金の知識はしっかり持っておき、「適正な制度の範囲の中で、いかに節税をするか」という工夫が大事になってきます。
めんどくさいなぁ・・・と思うかもしれませんが、今から少しずつ税金の知識を身につけておくことは大切ですよ。
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