しがらみゼロのFPブロガーMisaki(@fpmisaki2)です。
平成30年7月6日に、相続法の改正が成立したことはご存知でしょうか?
正確には、
- 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律
- 法務局における遺言書の保管等に関する法律
という、2つの法律が成立しています。
この法律で定められた内容をざっくりとまとめると、
- 自筆証書遺言制度の見直し
- 配偶者居住権の創設
- 婚姻20年以上の夫婦間での自宅贈与を保護
- 預貯金の仮払い制度創設
- 相続人以外が介護等で貢献した場合の支払い請求
- 遺留分の金銭債権化および算定基礎財産の変更
このように、なかなか盛りだくさんの内容です。
実は、法律としては成立したものの、施行日はまだ決まっていないものが大多数。
唯一決まっているのが、自筆証書遺言の方式緩和。
これだけは、2019年1月13日に施行されることが決まっているのですが、
それ以外のものは公布の日(=2018年7月13日)から1年以内または2年以内のどこかで施行日を決めますよってことになっています。
相続にまつわる話は、長い目でみてじっくり考える必要がありますので、早めに知っておいてソンはありません。
まずは、自筆証書遺言にまつわる事項の改正について、チェックしておきましょう。
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自筆証書遺言を作成するのは、結構大変
唯一、施行日が決まっているのが、自筆証書遺言の作成方法変更です。
まずは、現行の自筆証書遺言の作成方法について、おさらいしておきましょう。
自筆証書遺言の作成方法
- 遺言者がその全文、日付及び氏名を自署し、押印する。
- ワープロ・パソコン等で作成したものは無効。
- 音声やビデオの映像での遺言は無効。
- 日付のスタンプ、○○年1月吉日といった日付が特定できない表現も無効。
- 書き間違いの訂正や追加は、民法に定められている方式で行われなければならない。
自筆証書遺言作成時の注意事項
- 遺言の記載内容は具体的にし、あいまいな表現は避ける。
- 不動産は登記簿謄本通りに記入する。土地は所在地、地番、地目、地積などまで詳細に記入する。
- 預貯金は金融機関の支店名、預金の種類や口座番号まで詳細に記入する。
- 認印でも有効だが、実印にしておいた方がいい。
- 訂正方法が誤っている場合、無効になる可能性があるので、書き損じた場合には新たに書き直した方がよい。
- 遺言執行者を指定しておくとよい。
- 法的には決まりはないが、改ざんのリスクを避けるためには封書に入れて封印するとよい。
発見時には、家庭裁判所の検認を受けなければならない
遺言者が亡くなった後、自筆証書遺言の保管者または遺言書を発見した相続人は、遺言書を家庭裁判所に提出して、検認の請求をしなければなりません。
検認とは、相続人に対して遺言が存在すること及びその内容を知らせるものです。
同時に、遺言書の形状、加筆訂正の状態など、検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、偽造・変造を防止するための手続きです。
ちなみに、封印されている遺言書は、家庭裁判所で相続人立ち合いのうえで開封することになっています。
見つけた場合には、開封せずに、検認をうけるようにしましょう。
新・相続法では、一部パソコン利用が可能になる
こうしてみると、自筆証書遺言を書くのって、けっこう大変だなぁと思いませんか?
だれにも見られずに、いつでも気軽に書けるというメリットはあるものの、トラブルにならないように正しい方法で書こうとすると、けっこう大変なんですよね。
2019年1月13日以降に作成する場合には、少しだけ書くのがラクになります。
今までは全文自筆でしたが、財産目録の部分に限り、自署でなくてもよくなります。
例えば、
- パソコン等で作成した目録
- 不動産の登記事項証明書
- 銀行の通帳のコピー
などを、別紙目録として添付し、その全てのページに署名捺印をするという方法を取ることが可能になります。
証明書や通帳のコピーであれば、記載不備による無効化も防ぎやすくなりますので、一石二鳥ですね 😉
ただ、ちょっと気を付けておきたい点もあります。
自筆で記載した本文中に、「別紙目録の不動産を○○に相続させる」と書いた場合、目録に記載されていない不動産があった場合には対象から外れてしまいます。
不動産の場合、私道等の見落としがちな財産もありますよね。
「不動産の全て(別紙目録を含む)を○○に相続させる」など、包括的な表現をした方がいい場合もありますので、ご注意ください。
新・相続法のもう1つの改正。自筆証書遺言を法務局が保管してくれて、検認が不要になる!
自筆証書遺言のリスクとしては、紛失したり、一部の相続人が隠蔽したり改ざんしたりしてしまうという点もあります。
そこで、法務局が自筆証書遺言を保管する制度が新設されることになりました。
先ほど紹介した財産目録の簡素化とは異なり、こちらはまだ施行日が決まっていません。
公布の日から2年以内に施行されることになっています。
遺言者は、自ら作成した自筆証書遺言を、遺言保管所として指定された法務局に提出して、保管申請を行うことができます。
法務局では、遺言書の原本を預かるとともに、電子データ化されて保存され、遺言者はいつでも保管された遺言の閲覧を請求することができますし、遺言はいつでも撤回することができます。
しかも、法務局の事務官が、保管申請時に遺言の形式に不備がないかを外形上チェックしてくれますので、無効になるリスクは下がります。
(内容の不備までは見てもらえません。あくまでも外形上の不備チェックだけです。)
紛失・改ざんのリスクがなくなるため、家庭裁判所による検認を受ける必要もなくなりますし、相続人は遺言書を探しやすくなります。
自筆証書遺言が持っていたデメリットの多くがカバーされるようになりますので、今までよりも使い勝手が良くなることが期待できそうです 😀
まとめ-改正によって便利にはなるけど、注意も必要
自筆証書遺言の利便性が格段にあがり、だれでも気軽に遺言書が残せそうって思いますよね。
もちろん、だいぶ使いやすくなったのは事実ですが、気を付けておきたい点もあります。
形式だけもチェックしてもらえる分、つい安心しがちですが、遺言の内容不備まではチェックされないことを忘れてはいけません。
遺言に書かれている文言が不十分だったり不明確だったりすれば、かえって争族のもとになります。
相続人の間で遺言書の効力そのものについて争いとなり、話し合いで解決がつかなければ、裁判所に「遺言無効確認訴訟」を提起することになってしまいます。
こうなってしまうと、遺言がなかった場合よりも、相続人同士の関係は悪化してしまうことになりかねません。
もし、自筆証書遺言を残す場合でも、専門家に相談して作成した方が無難です。
また、法務局に預けたことにより、安心してしまい放置する危険性もあります。
作成方法はどうであれ、遺言書はメンテナンスを怠らないように注意が必要です。
例えば「妻に相続する」という遺言を準備していて、妻が先に旅立った場合、そのまま放置しておけば無効な遺言が保管され続けることになります。
まだまだ公正証書遺言を用いた方が、安全度が高い状況だと言えますが、自筆証書遺言を残したいと思っている方にとっては、良い環境が整ってきつつあります。
法律施行後は、ぜひ法務局の遺言書保管制度をチェックしてみてくださいね。
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