しがらみゼロのFPブロガーMisaki(@fpmisaki2)です。
住居費は、人生においては大きな支出です。
家を買う、家を借りる。
どんな手段を取ったとしても、家計の支出に占める割合が大きくなるものですよね。
親世代からは、家庭を持ったら家を買うことが一人前の証とか、持ち家があることがステータスとか言われ続けていて、自然とそれが当たり前のような感覚になってしまっている方も多いのではないでしょうか。
でも、少し冷静に考えてみて欲しいのです。
その選択は、本当にあなた方のライフプランにあっているものなのかということを。
- 賃貸は、お金が出ていくだけだからムダ。
- 金利が低いし、住宅ローンが組めるから、今のうちに家を買ってしまおう。
- 家を買っておいたら資産になるし、困ったら売ればいい。
こういう点が、家を買うという判断のメインになっている場合、のちのち後悔する可能性があります。
持ち家派、賃貸派、それぞれの言い分があって、何を選んだらいいか分からない。
そんなときに、考えるうえでのヒントをお伝えしていきます。
スポンサーリンク
持ち家は、本当に資産と言えるのか?
『金持ち父さん 貧乏父さん』の著者であるロバート・キヨサキ氏は、資産と負債の定義について、実にシンプルに語っています。
資産と負債
- 「資産」は私のポケットにお金を入れてくれる
- 「負債」は私のポケットからお金を取っていく
この考え方に立ったときに、自宅という不動産は、果たして資産と言えるでしょうか。
不動産価格が上昇していた時代であれば、資産と言えたかもしれません。
ですが、今は新築マンションの完成在庫が出ている時代です。
東京都内で、かつ最寄駅から距離が近い立地のマンションであったとしても、完成在庫が生まれている現状があります。
以前は、マンションを建築する場合には、建物が完成するまでには全戸完売することが基本でした。
今では、完成時に在庫を抱えているだけでなく、1年以上買い手がつかない物件も増えてきていることから、完成在庫が積み上がりつつあるのです。
利便性が高い東京23区エリアでもそのような状況なのですから、それ以外の地域ではもっと厳しい状況にあることがお分かりいただけるでしょう。
こうした状況のなか、一度買った家を売りに出した場合、例え売れたとしても残債が出る可能性が極めて高いです。
そのため、ローン完済前に自宅を売った場合、売却後も残りのローンを払い続けなければならなくなるリスクがあると考えておいた方がいいでしょう。
ちょっと視点を変えてみましょう。
家ではなく、株や投資信託などの金融商品を買おうとした場合に、
- 市場の状況は、値下がりの方向に向かっている
- 売りに出した場合に、すぐに売れるという保証はない
- 金融資産を手に入れるための手元資金がなく、借金をして購入する
という条件のものが、ポケットにお金を入れてくれると感じますでしょうか。
まず、買おうとすら思いませんよね 😉
でも、これが、持ち家を買う場合の状況にとっても近いのです。
こうした観点から、自宅として使う不動産を、ロバート・キヨサキ氏の定義による資産とみることはできず、負債として考えるべきものだと言えるのです。
サラリーパーソンは、特に慎重に考えるべき
既にある程度の金融資産を持っていて、ローンを組まずに一括購入できる(または短期間のローンで済む)場合は別ですが、一般的なサラリーパーソンは、35年ローンなどの長期ローンを組んで家を買うことになるでしょう。
長期に渡り、負債を抱えることのリスクは、とても大きいのです。
- 今の給与以上の給与が、5年後10年後ももらい続けられる保証はありますか?
- 健康を害して働けなくなった場合、同じような収入を得る手段がありますか?
- 夫婦でペアローンを組んでいる場合、同じレベルで共働きを維持できますか?
- 子どもが早い段階から私立への進学を希望した場合、あきらめさせるという選択肢がありますか?
夢も希望もないと思われるかもしれませんが、このような収支状況の変化についても、可能な限り想定しておく必要があります。
自分たちではどうすることもできない、外的な要因ももちろんありますが、夫婦が働き続けるか、お子さまの教育費をどうするかなど、ご自身がどのような選択をしたいかによって変わってくる部分も多々あります。
多額のローンを組んで家を買うということは、金融商品に置き換えると、レバレッジをかけて投資をするのに近い感覚があります。
例えば、FXでは、手元資金が1,000万円しかなくても、5倍のレバレッジをかけて5,000万円分の投資をすることが可能ですよね。
でも、一般的なご家庭の方が、そんなギャンブル的な取引をするのは怖いし、やろうとも思わないはずです。
それなのに、住宅ローンを組むときには、これに似たハイリスクな選択をしてしまいがちなのです。
これが常識の怖さなのかもしれません。
みんながローンを組んでいるから、ローンを組むのが当たり前・・・
当たり前の中に潜む、ハイリスクに気が付くことは、とっても難しいです。
給与が右肩上がりに増えていくとは考えにくく、終身雇用も崩れてしまった現状は、多くのサラリーパーソンにとっては厳しい状況だと言えるでしょう。
そんな社会的背景も含めて、さまざまな角度から考えたうえで、住宅ローンを組んで家を買うと決めた場合には、今なら組めるローンの額ではなく、きちんとした将来設計に基づき、予算を決めるように心がけましょう 😉
持ち家の「本当のリスク」とは何でしょう
家を買い、ローンを組んだ後の最大のリスクは、そこから簡単には動けなくなることなのです。
お子さまが生まれる前に家を買い、環境も良く、気に入っていたものの、お子さまのアトピーの転地療養のため、転居が必要になるなどというケースもあります。
会社から転勤の辞令が出てしまい、本当は一緒に暮らしたいのに、家があるから単身赴任をせざるを得なくなるというように、サラリーパーソンの場合には、会社の都合により住む場所が変わってしまうリスクもありますね。
お子さまが学校でいじめにあってしまった、近所に騒音などの迷惑行為をする人が引っ越してきてしまった、少し子どもが走り回っただけでもクレームがひどく、息をひそめて生活しなければならなくなった・・・など、どんなに物件や街並みがよかったとしても、その場にいることで不幸せになってしまう状況に「変わって」しまうことがあるのです。
一方、賃貸住宅であれば、その時の状況に応じて、住み替えをすることが簡単にできます。
周辺環境が悪化したら別の場所へ移るのはもちろんのこと、急きょ海外でMBAを取りたいなどの積極的なキャリアアップをしたいと考えた時にも、場所に縛られていなければ、柔軟に対応することができます。
転職や給与のダウンなどにより、収入が下がってしまった場合にも、賃料の低い物件に引っ越すことで、住居費の減額を図ることができますが、住宅ローンを組んでいた場合には、そういうわけにはいきませんね。
ご家族の状況が、どのように変わろうが、住居費として支払う金額が固定されてしまうのも、大きなネックになるのです。
高齢者は、賃貸住宅が借りられないってホント?
よく聞く話として、「高齢者は賃貸住宅を借りられない。だから家を持っておかないと!」という説があります。
孤独死のリスクや家賃未納のリスクなどがあることから、昔はそういう傾向がありました。
ですが、空室率が増加傾向にあり、少子高齢化が進む現状において、そんなことを言っていたら大家さんも商売が成り立ちません。
月々の家賃が支払えるだけの、コンスタントな収入があれば、それが年金か給与所得かはあまり関係がありません。
家賃が回収できるだけの収入があり、問題行動をしない人であれば、大家さんとしても特にこだわりなく貸してくれるでしょう。
老後に関して、1つ大事な観点として、自宅で最期を迎えられる可能性は、限りなく低いという点も忘れてはいけません。
「終の棲家」と言う言葉はあるものの、残念ながら最後は高齢者向けの住宅や施設に移ることが想定されますね。
そうすると、持ち家がある場合には、その持ち家をどうするかという悩みが出てきます。
- 認知症になってしまえば、相続が発生するまで売ることも管理することもできない。
- 相続対象になったとしても、売れる保証もなければ、住む人もいないし、相続人の間で分けにくい。
というように、次の世代へ上手に引き継ぐことができず、残された家族の足かせになってしまう可能性もあるのです。
まとめ-家なんて買うもんじゃないということですか?
今まで多くの人が、無理してローンを組み、持ち家を買ってきた最大の理由は、土地の価格が右肩上がりだったことと、家を次の世代に引き継ぐことができたため、確実な資産形成につながったからです。
土地神話は崩壊しましたし、子ども世代も、交通が不便な郊外の家ではなく、職場に通いやすいコンパクトな物件を好み、受け継がれる家には住まないというライフサイクルが多くなってきています。
こうした状況を見ると、家を持たなければいけないという常識は見直していいものになっています。
ご自身のライフプランにあっていると考えた場合には、堂々と賃貸生活を満喫してください 😉
ただ、誤解をしないでいただきたいのは、「家なんて買ってはいけない」という意味ではないのです。
やはり、生活音の問題やキッチンなどの設備の充実度という点では、賃貸物件は持ち家にはかないません。
家の居心地(満足度)は、持ち家の方が高いです。
ここまでたくさんあげたリスクを理解しつつ、
- 建物評価が高い中古物件を探す
- ライフプランをしっかり立ててから、無理のない予算設定をする
- 自分の暮らしにとって、「自由にリフォームできる家があることに、大きな価値がある」など、持ち家のメリットがデメリットを上回るかどうか、しっかり確認して決める
- ずっと住むのではなく、上手に売り抜けられる(可能性が高い)物件を選んで、リスクを軽減しつついい家に住む
など、考えらえるリスクの軽減策や、持ち家の必要性をしっかり考えたうえで、選択して欲しいということなのです。
変化球としては、不動産経営をしていく自信がある場合には、不動産を自宅として持つのではなく、貸しマンションを保有して、その収益で自分の住まいの家賃を払うというサイクルを生み出すという考え方も1つの方法でしょう。
常識に縛られるのではなく、現時点で想定される未来の姿を考えながら、ライフプランとセットで住まいをどうするかを考えてみてくださいね。