しがらみゼロのFPブロガーMisaki(@fpmisaki2)です。
2025年問題という言葉は聞いたことがありますか?
日本が超高齢化社会に向かって行っていることは、だれもが感じていることですね。
団塊の世代と呼ばれる、1947~49年の第一次ベビーブームに生まれた人々が、75歳以上の「後期高齢者」になるのが2025年なのです。
このころには、毎年の死亡者数が出生率の2倍になると見込まれています。
当然、「認知症の高齢者が増える」、「介護の担い手が不足する」、「老老介護や認認介護が広がる」などの様々な問題が発生してきます。
今後、認知症患者の増加は避けられませんし、認知症の人が認知症の人を介護する(=認認介護)という厳しい現実も増えてきます。
自分が認知症になってしまう、あるいは家族が認知症患者となってしまう・・・
そんな状況は、多くの人々にとって現実の問題となのです。
認知症になってしまったとき、盲点となっている、お金にまつわる問題があることはご存知でしょうか?
脅すわけではありませんが、なってしまってからでは手遅れです。
事前に手を打っておく必要があるのです。
スポンサーリンク
資産の管理はどうすればいいの?
例えば、自分の親が認知症になってしまい、介護費用に充てるために、親名義の預金を引き出したり、親名義の自宅を売却したいと考えたとします。
自分が間違いなく親族であることが証明できれば大丈夫なのでしょうか?
答えはNOです 😳
たとえ本人が施設に入るための費用で、それを証明する契約書があったとしても、本人の意思が確認できない以上、預金を引き出したり、所有している不動産を売却することはできないんです。
こうなってしまうと、取るべき道は「成年後見制度」を利用することとなります。
成年後見制度・・・聞きなれない言葉ですね。
どういうものなのか、見ていきましょう。
成年後見制度って、どういうもの?
成年後見制度は、法定後見制度と任意後見制度の2種類に分かれています。
もう認知症患者となってしまった場合には、「法定後見制度」を活用することになります。
家庭裁判所へ後見開始の申し立てを行うと、家庭裁判所が「成年後見人」を選定します。
成年後見人が、本人の意思を尊重しながら契約などの法律行為をしたり、逆に本人が不利益な契約行為を取り消すことができるようにするという制度です。
つまり、成年後見人になると、介護施設への入所契約を結んだり、費用の支払いをしたり、訪問販売で高額な商品を交わされてしまった場合に取り消したりすることができるわけです。
ただし、法定後見人であっても、自宅を売却する場合には、家庭裁判所の許可が必要になります。何でも自由に処分ができるわけではないのです。
さて、この法定後見人には、どんな人が選ばれるのでしょうか?
後見開始の申し立てをする場合、「後見開始申立書」に後見人の候補者を記載します。
特段の問題がなければ、依頼に来た親族が就任することが多いです。
ですが、
- 親族間にトラブルがある
- (1,000万円を超えるような)多額の現預金がある
- 申立書に不備が多く、財産調査が難しい
というような事例にあたる場合には、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれる傾向があります。
親族が全く知らない専門家が後見人となってしまうこととなるわけです。
もちろん、専門家の方々は、高い倫理観のもとに職務を遂行してくれるはずですが、やはり人となりも分からない状態で、契約行為を代行してもらうことには、不安があることと思います。
さらに、専門家が法定後見人になった場合には、当然、報酬の支払いが発生します。
報酬額の相場は月額2万円~6万円。
家庭裁判所が報酬額を判断しますので、相場を大きく逸脱することはないでしょう。
それでも、親族にとっては大きな負担がのしかかってきます。
(報酬を受け取る側の視点に立つと、業務の負荷からすると意外と低いという見方もありますが・・・)
一度、後見制度が始まったら、本人が判断能力を回復するか、お亡くなりになるまでは原則として続けなければなりません。
報酬の支払いがいったい何年続くのかは、まったく分からないのです。
成年後見人を自分で選ぶには?
やはり自分の財産管理は、自分が選んだ人に託したいという場合には、「任意後見制度」というものがあります。
自分が元気で、判断能力があるうちに、もしもの場合に備えて任意後見人を選んでおくことができます。
- 任意後見人になってもらいたい方との間で、「任意後見契約」を結んでおきます。
- 任意後見契約は公正証書で結びますので、契約をしたこととその内容が登記されます。
元気で判断能力があるうちは、この契約の効力は発生しません。
本人の判断能力が衰えてしまった時に、「任意後見監督人選任の申し立て」を家庭裁判所に対して行うと、必要性を判断のうえで任意後見監督人が選任されます。
任意後見監督人が選定されると、契約を結んでいた方が「任意後見人」となり、任意後見人は、家庭裁判所で選ばれた任意後見監督人の監督を受けることとなります。
任意後見人に対して報酬を支払うかどうかは、事前の契約内容によります。
親族が引き受ける場合には、無報酬になることが多いです。
ですが、任意後見監督人に対しては、必ず報酬が発生します。
報酬額の相場は月額1万円~3万円。
管理する財産額によって、金額は変わってきます。
任意後見人の権利は、法定後見人に比べると限定されています。
事前に任意後見契約で決めておいた財産管理などに関することに限られますし、権利の種類は代理権に限定されていて、取消権や同意権はありません。
つまり、代わりに契約行為を行うことは可能なのですが、後見人が知らないところで不利な契約を結んでしまったとしても、任意後見人には取り消すことができないんです。
任意後見人が行うことができる範疇をこえて、契約の取り消しなどを行う場合には、法定後見の申立てを行い、法定後見人を選任してもらわなければならないのです。
成年後見制度の落とし穴
後見制度が開始されてしまうと、できなくなってしまうことがたくさんあります。
例えば、相続税対策のための生前贈与、賃貸マンションの建て替え、生命保険の解約、株式の売却などです。
これらの行為は、本人の財産を守るという成年後見制度の趣旨には反してしまうため、元気なころに本人の想いがあったとしても、どうすることもできなくなります。
もう一点
悲しいことではありますが・・・
ある意味、大きな資産を管理できるようになるので、後見人が財産を着服してしまうことも起こりえます。
2015年におこった後見人による着服などの不正発生件数は、521件(29億7,000万円)。
そのうち専門職は37件(1億1,000万円)。
おそろしいことに、弁護士や司法書士などの専門職による着服も一定数起こっているのです。
きちんと信頼できる専門家を探せるかどうか、ここも重要なポイントです。
とはいえ、圧倒的に不正を起こしているのは、親族が後見人となった場合です。
さらに、相続が発生した段階で、後見人とそれ以外の親族との間で、財産管理のあり方を含めた争族に発展してしまうこともあります。
新たな財産管理の方法-家族信託とは?
家族信託とは、老後の生活や介護に必要な資金の管理といった特定の目的に従って、財産を管理・処分することを、自分が信頼できる家族に委託するという、財産管理の一手法です。
契約に盛り込んでおけば、積極的な資産運用や自宅の売却、賃貸アパート建設なども、委託を受けた家族(=受託者)が行うことができるため、後見制度のデメリットをカバーすることが可能となります。
つまり、契約内容により、柔軟な設定ができるのが大きな特徴です。
さらに、当事者間の契約となりますので、報酬なしで契約を結ぶことが可能です。
法定後見や任意後見のように、毎月報酬を支払い続けることがなく、利用することができるわけです。
こうしてみると、いいことばかりのようですが、やはりデメリットもあります。
そもそも家族信託は、2007年に信託法が改正され、営利を目的としない信託の活用がしやすくなったことから活用され始めました。
まだ歴史は浅く、実務に精通した専門家が少ないのが正直なところですし、見解が分かれるような事項に関する判例が少ないという現状があります。
実務経験があり、自分の想いをしっかり理解してくれる、信頼できる専門家を探すことができるか? が重要事項になってきます。
当然、司法書士や弁護士への報酬は、コンサルティングという位置づけになりますので、成年後見制度に比べると割高になります。
相場としては、45万円~60万円くらいといわれていますが、財産の種別や総額によって状況が変わるため、一概には言えません。
所有資産が1億円を超えるような資産家の場合には、100万円を超えるようです。
家族信託は、信頼できる家族がいて、その他の親族も納得したうえで利用できれば問題がないのですが、受託者を決めたことにより争いの種になってしまうこともあり得ます。
任意後見制度を使う場合も同じですが、
信頼できる親族へ、自分の想いを明確に伝えておくことが大切ですね。
おわりに
自分の親が認知症になったらどう対処する・・・なんていう話は、正直なところしにくい内容ですよね。
でも、身近な現実として、知識を得て防衛策を取っておくことは大切です。
まずは、どんな制度があるのか頭に入れておき、元気なうちに対策を立てておくことが重要ですね。
対策を考える際には、何よりもご本人の想いを大切にしてください。
そして、お金という現実に向き合っていきましょう。
スポンサーリンク
スポンサーリンク