しがらみゼロのFPブロガーMisaki(@fpmisaki2)です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は節税効果が抜群で、しかも3段階の税制優遇があります。
これって、ちょっとiDeCoのことを調べると、目にする言葉ですよね 😉
でも、税金の本質を理解していないと、本当の意味で恩恵を受けることはできなくなってしまうので、注意が必要です。
盲点になりやすい税制のマジックについて、先に知っていて納得しているかは、とっても大事。
最終的に最も自分のためになる受け取り方をするために、必要な基礎知識について確認していきましょう。
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所得控除の本当の意味-税金の世界では、ときどき課税の繰り延べが行われている
iDeCoの節税効果として、掛金が全額所得控除の対象という点があげられますね。
掛金が年間144,000円で、所得税率が20%の方の場合、
- 所得税 144,000円×20%=28,800円
- 復興所得税 28,800円×2,1%=604円
- 住民税 144,000円×10%=14,400円 合計 43,804円
なんと、年間約4.3万円が減税されます!
やったー 😉
お金が増えた、使っちゃえーと、カンタンに考えてはいけません。
確かに、「今」支払う税金は下がります。
ですが、実際に受け取るときの仕組みはどうなっているでしょうか?
iDeCoの所得控除額に注目してみよう
仮に、iDeCoを使わずに、200万円の投資信託を積み立てで買って、売ったら220万円になったとしましょう。
この場合、税金は「もうけ」の部分に対してかけられます。
つまり、220万円-200万円=20万円 に対して、20.315%の税率がかけられるわけです。
一方、iDeCoで200万円の投資信託を積み立てで買って、220万円になっていたらどうでしょうか?
なんと、220万円全てが税計算の対象となります。
自分が払った掛金が200万円含まれているにも関わらず!! です。
カンのいい方はお分かりだと思いますが、
掛金を支払った「今」は税金をもらわないけど、最終的に利益を確定して受け取る「未来」には、その時のルールでちゃーんと税金をもらいますよ!!! という仕組みになっているんです。
これを課税の繰り延べと言います。
課税の繰り延べって、ソンなのトクなの?
このような「繰り延べ」作戦は、税金の世界ではよく出てきます。
- 今は贈与税をもらわないけど、相続の段階になったら一括して税金もらうよ!
- 今は家を買い替えるために売った譲渡益に対する税金はもらわないけど、次の買い替えの時には最初の分も含めてもらうよ!
というような具合です。
もちろん、今使えるお金が増えることは、メリットです。
増えたお金を運用して、お金に働いてもらったり、絶対に必要なものを買うための足しにしたり・・・
繰り延べた結果、税金の計算方法が変わるので、結果として得するという場合だってあります。
とはいえ、単純に税金がチャラになったと考えてはいけないということは、今のうちに理解しておきましょう。
そう、一言でいうと「先送り」をしているだけなのだということを。
ですが、先送りにより得られた余裕資金をうまく活用すれば、結果としては資産が増えるわけですから、おトクな制度であることには間違いありません。
一方で、
- 節税効果分がもうかったから、ぱーっと使おう!
- 節税されるから、本体の運用でマイナスになっても定期預金でいいや!
という考え方をしてはいけないことが、見えてきたと思います。
iDeCoを始めるなら、リスク資産への投資を行うことを前提として、しっかりと投資についての基礎知識を学んでおくことが大事ですね 😉
私の知り合いと、退職後の確定拠出年金の受け取り方法について、一緒に考えていたときに、
「元本にも税金がかかるなんて、損した気分だなぁ」
と、しきりにおっしゃっていました。
結果としては、節税メリットが大きかったということをお伝えしたら、納得はしてくれたものの・・・
お話しをしながら、気持ちの問題って、けっこう大事だなぁと思ったんですよね。
最初から考え方を理解していたら、「損した気分」を味わわなくて済んだわけです。
お金が増えるか減るかという視点だけでなく、その結果に対する納得感があるかどうか。
実際に相談を受けたことで、この「納得感」という視点を忘れちゃいけないなぁと感じたわけです。
だからこそ、納得感が得られるように、今のうちにしっかり情報を得ておきましょうね 😉
出口戦略を考える-iDeCoは、受け取り方が超重要!
ただの先送りなら、やっぱりメリットがないよね・・・
そう感じてしまうかもしれません。
確かに先送りではありますが、実は受け取る時には一定の所得控除というものがあります。
特に、一括受け取りの時には、課税対象となる部分が大幅減額になるというボーナスもあったりします。
上手な受け取り方を考えれば、基本的には繰り延べたあとに支払う税金の方が安くなりますし、うまくいけば0円になることもあるのです。
それでは早速、iDeCoを受け取るときの税金について、チェックしてみましょう。
iDeCoの受け取り方は、全部で3パターンあります。
- 全額一時金として受け取る
- 一時金と年金を併用して受け取る
- 全額年金として受け取る
要は、一気に受け取るか、毎年受け取るかの違いですね。
この受け取り方によって、税金計算の仕組みが全く異なっています。
一時金として受け取る場合は、退職所得
一時金として受け取った場合には、「退職所得」として、給与や年金とは区別して税金が計算されます。
会社から退職金が出る場合、退職金とiDeCoの一括受取額は、両方とも退職金収入として扱われます。
一方、退職所得控除というものがあり、勤続年数またはiDeCoの加入期間のどちらか長い方を基準として、所定の計算式により算出します。
- 退職所得控除:1年あたり40万円、20年を超える場合には、21年目から70万円となります。
- 退職所得:(退職金-退職所得控除)✕1/2 で計算します。
- 税額計算:所得税は、速算表という計算用のルールがあります。退職所得が多ければ多いほど、税率は上がっていきます。復興所得税は、所得税額✕2.1%、住民税は、退職所得✕10%です。
注目すべきは、退職所得の計算式にある1/2です。
50%OFF!!と言い換えると、さらにイメージがわきますでしょうか。
その前段階の退職所得控除も、勤続年数が長い方は金額が大きいので、減税効果が期待できますね。
それでは、実際に何パターンか計算してみましょう!
ケーススタディ1
会社の勤務年数が29年3か月、iDeCoへの加入期間が20年
会社からの退職金が2,000万円、iDeCoからの一時金が1,000万円の場合
まずは、退職所得控除を計算してみます。会社の勤続年数の方が長いので、勤務年数が基準となります。
年数の計算をする場合、端数の月は切り上げになりますので、ここでは30年として計算します。
これを前半20年と後半10年に分割して、計算式にあてはめると、
(20年✕40万円)+(10年✕70万円)=1,500万円 が控除額となります。
退職所得の計算方法は、(退職金-退職所得控除)✕1/2ですので、
(退職金2,000万円+iDeCo1,000万円-控除1,500万円)✕1/2=750万円となります。
退職所得が算出できたら、税額の速算表にあてはめます。
課税退職所得金額(A) |
所得税率(B) |
控除額(C) |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 9.75万円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 42.75万円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 63.6万円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 153.6万円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% | 279.6万円 |
4,000万円超 | 45% | 479.6万円 |
このケースでは、
- 所得税 750万円✕23%-636,000円=1,089,000円
- 復興所得税 22,869円
- 住民税 750万円×10%=750,000円 合計 1,861,869円
けっこうな金額になりました!
ケーススタディ2
会社の勤務年数が40年0か月、iDeCoへの加入期間が20年
会社からの退職金が1,200万円、iDeCoからの一時金が1,000万円の場合
退職所得控除額:(20年✕40万円)+(20年✕70万円)=2,200万円 が控除額となります。
退職所得:(1,200万円+1,000万円-2,000万円)✕1/2=0円となりますので、
税金はかかりません。
つまり、
- 会社からの退職金がたくさん出る方
- 勤続年数が短い方
は、一時金での受け取り金額の設定時には要注意です。
退職所得があがればあがるほど、税率もあがっていくので、税率の切り替わりラインも見ておくといいですね。
一方、退職金収入が退職所得控除額の範囲内で納まっていれば、税金はかかりません。
会社からの退職金が少ない場合には、積極的に一時金を利用すると、節税につながります。
そして、受け取り時期をずらすと、さらに状況が変わります。
実際に比較してみましょう。
ケーススタディ3
ケーススタディ1の方が、退職金とiDeCoの受け取り時期を変えた場合
会社の勤務年数が29年3か月、iDeCoへの加入期間が20年
会社からの退職金が2,000万円、iDeCoからの一時金が1,000万円で、会社の退職金は60歳で受け取り、iDeCoからの一時金は65歳で受け取る場合
<60歳の時>
- 退職所得控除:(20年✕40万円)+(10年✕70万円)=1,500万円
- 退職所得:(2,000万円-1,500万円)✕1/2=250万円
となりますので、
- 所得税 250万円✕10%-97,500円=152,500円
- 復興所得税 3,202円
- 住民税 250万円×10%=250,000円 合計 405,702円
<65歳の時>
- 退職所得控除:なし
- 退職所得:(1,000万円-0万円)✕1/2=500万円
このケースでは、
- 所得税 500万円✕20%-427,500円=572,500円
- 復興所得税 12,022円
- 住民税 500万円×10%=500,000円 合計 1,084,522円
総合計は、1,490,224円
ケーススタディ1の結果と比較すると、受け取り時期をわけただけで、1,861,869円-1,490,224円=371,645円も税金が減りました!
iDeCoの受け取りを5年間遅らせていますので、先に1,000万円を受け取っておいて自力で運用し、5年で38万円以上増やせるのであれば、最終的にはその方がトクです。
トータルでどっちがおトクか? については、一概には言えませんが、税金という観点から見るとだいぶ下げることができます。
この差は、分散することにより、税率が下がっていることにより、生まれています。
速算表のどの部分に当たるかは、けっこう大事なポイントですね。
年金として受け取る場合は、公的年金控除
年金として受け取る場合には、公的年金控除が受けられるのですが、国民年金や厚生年金などと合算して判断されますので、控除額を超えてしまう可能性が高いです。
さらに、年金受け取りにした場合には、年金収入に対する社会保険料もかかってきます。
一般的には、 全額年金 < 一時金+年金併用 < 全額一時金 の順に、手取り額が増える傾向にあります。
一方、年金形式の場合には、残額は運用されている状態が続きますので、運用益を何%で見積もるかにより、どちらがトクかは変わってきますね。
おわりに-税金の仕組みを知っておき、50代後半になったら作戦を考えよう
iDeCoは、その受け取り方によって、大きく税額が変わってくることがイメージできたと思います。
ですが、自分にとってどの方法がよいのか? ということになると、人それぞれなんです。
個々の状況にあわせて、パターンを変えて計算してみないと、答えは出せません。
これは重要なことですが、
ファイナンシャルプランナーは、個別に具体的な税計算を行ってはいけないこととなっています。
あくまでも、一般的な事例をご紹介することしかできないのです。
とはいえ、一般的な事例を見ておけば、考え方のツボや、注意すべきポイントが見えてきますので、決してムダではありません。
税金の観点以外の視点も含めて、広く総合的に考えてもらえます。
ファイナンシャルプランナーが「健康診断」をして、専門家である税理士へ「紹介状」を書く・・・
そんな位置づけだと思っていただければわかりやすいですね。
さらに細かい要件もいろいろとあるので、まずは考えるヒントとしていただき、実際の受け取りの際に比較検討をしたい場合には、税理士に相談してみてください!
忘れてはいけないのは、
節税という観点はもちろん大事ですが、それだけになってしまっても危険だということ。
一時金の方が節税できるから!と、まとめて受け取ったはいいものの、大金を手にしてしまったことで無駄づかいをしてしまうとか、受け取った資金の再投資について考える必要があるなど、違った悩みが生まれてくる可能性もありますね。
ちなみに、一時金として銀行にまとまったお金が入ってくると、投資商品の勧誘がやってくるそうです(涙)
そこで手数料が高くリスクも高い金融商品を買ってしまって、結果として資産が減ってしまった・・・なんていうオチになる方もいるようですので、注意が必要です。
アパート経営をしませんか? なんていうパターンも、自分でしっかり調べなければいけません。
ちゃんと理解して、有効活用する分には問題ないのですが、すすめられるままに決めてしまってはいけませんね。
そして、実は最大のリスクとして、頭の片隅に入れておきたいことは、
実際に受け取るころには、税制が変わってしまっているかもしれない、ということ。
20年後にどうなっているか、それはだれにも分かりません。
税率や控除額などは、変わってしまうかもしれないなぁということは、頭の片隅に入れておき、まずは、今得られるメリット(=今使えるお金が増える)を上手に生かすことを考えましょう。
今の時点では、出口戦略が大事だということを理解・納得しておき、受け取りの時が近づいてきたら、一番自分にとっていい方法をシミュレーションしてみましょうね。
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