しがらみゼロのFPブロガーMisaki(@fpmisaki2)です。
日本の住宅市場では、新築住宅が80%を占めています。
一方、欧米では中古住宅が80%となっており、「中古住宅を買うのが当たり前」という真逆の状況が起きています。
欧米の方は、「中古住宅の方が、一度人が住んでいる分、良しあしの履歴が分かって安心。」というとらえ方をしています。
ところが、日本人の場合には、中古住宅に対して「不安・汚い・わからない」というイメージが根強く残っていて、避けられてしまう傾向にあるのです。
一般的に、新築住宅には土地や建物の建設費に加えて、広告費やモデルルーム設置費などの間接費用が約30%加わっています。
購入して1日住んだら「中古住宅」になってしまいますので、ものすごい勢いで資産価値が下落する、危険な高コスト商品だということは心に留めておいた方がいいでしょう。
それならば、しっかり手入れされた中古住宅を買った方が、おトクなのではないか?
そんな考えを持つ方も増えてきましたし、住宅供給が飽和状態になりつつある現状も踏まえ、中古住宅が安心して買えるように、環境整備をしようという動きが出てきています。
そんな、最近の変更点を中心に、中古住宅取引にまつわる取り組みをご紹介してみます。
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インスペクション(建物状況調査)とは、どんなもの?
インスペクション(建物状況調査)というものを聞いたことがありますでしょうか?
住宅に精通したホームインスペクターが、第三者的な立場から、住宅の劣化状況や欠陥の有無、改修すべき場所やその時期、おおよその費用を見極め、アドバイスを行う専門業務のことです。
ひと言で言えば、住宅の健康診断ですね。
ホームインスペクションは、基本的に目視でのチェックとなります。その他の手段としては、通水・触診・建物に傷をつけない機器を用いるなどの方法にとどまります。
さすがに、壁に穴をあけたり、壊したりして検査することはできませんからね・・・
チェックする対象も、
- 基礎・壁・柱などの「構造耐力上主要な部分」
- 屋根・外壁・開口部など「雨水の侵入を防止する部分」
など、重要部分に限られることが多いです。
つまり、欠陥の有無を「保証」することまではできず、あくまでも建物の状況を把握することが目的で行われるものです。
インスペクション周知が目的で、宅建業法が改正された
2018年4月1日より宅地建物取引業法(略称:宅建業法)が一部改正され、インスペクションに関する事項が盛り込まれました。
- 購入(売却)の依頼を受けた仲介業者が買主(売主)に対して「インスペクション業者をあっせんできるかどうか」を伝えることが義務付けられる。
- インスペクションを行った場合、契約前に行われる「重要事項説明」の際には、調査結果が買主に対して説明される。
- インスペクションを行った場合、売買契約時に売主・買主の両者が建物の状況を確認する。
残念ながら、インスペクションの「義務化」にまでは至っていないことが分かりますね。
ですが、この改正により、そもそもインスペクションを知らなかった買主が、存在を知るきっかけにはつながります。
中古住宅の品質に対する情報開示の質を高めていくために、インスペクションというものを広く知らしめようという意味合いで、法改正が行われたのです。
もちろん、ただ調査をするだけでは意味がなく、インスペクションを誰にやってもらうのか?という点が重要です。
実は、インスペクションという名のついたサービスは数多くあり、特に資格を持っていない人が行っているケースもあるのです 😈
ですが、宅建業法で規定されているインスペクションに該当するものは、「既存住宅状況調査技術者」を取得した建築士が行うものに限られています。
この既存住宅状況調査技術者として登録するためには、国の登録を受けた「既存住宅状況調査技術者講習」を受講しなければなりません。
講習の受講資格には「建築士であること」と定められていますので、建築士以外の人が紛れ込む心配がありません。
無資格の人ではなく、ちゃんと講習を受けた建築士に見てもらえるという点で、インスペクションの価値を保つ効果があります。
インスペクションの存在が周知され、その価値が高まっていけば、インスペクションを行っていない中古住宅は売れない(または価値が下がる)ことにつながります。
「安心R住宅」マークの有無は、要注目
安心R住宅? 聞いたことないんですけど?
そういう方が大多数だと思います。
法律が施行されたのが平成29年12月1日ですから、まだまだこれから広まる(はず)の制度です。
中古住宅が持つ、悪いイメージを払拭するために、「安心」、「きれい」、「情報が分かる」という3つの条件を備えた中古住宅に対して、「安心R住宅」の標章をつけよう!というものです。
標章の使用開始は平成30年4月1日からですから、できたてホヤホヤの状態です!
安心とは、具体的にどんなこと?
- 昭和56年6月1日以降の新耐震基準に適合している
- インスペクションの結果、構造上の不具合および雨漏りが認められず、「既存住宅売買瑕疵保険」の検査基準に適合している
この両方を満たしていることが条件です。
きれいとは、具体的にどんなこと?
安心R住宅の「R」には、Reuse(再利用)、Reform(リフォーム)、Renovation(リノベーション)の意味が含まれています。
つまり、リフォームやリノベーションによってきれいな状態になっていること、あるいはきれいな状態にするためのリフォーム提案(費用や工事後のイメージ)がついていることが条件です。
あわせて、外装、主たる内装、水回りの現況写真が閲覧できます。
情報が分かるとは、具体的にどんなこと?
中古住宅が売りに出された際の広告において、その住宅の履歴情報や点検記録などが示されていて、さらに求めがあれば詳細情報が開示できる状態にあることが条件です。
分譲マンションの場合には、管理組合により適正な管理が行われることが重要ですね。
安心R住宅では「管理規約および長期修繕計画があること」が要件となっています。詳細な内容は、仲介業者に依頼して開示してもらうことができます。
現時点ではまだまだ数は少ないかもしれませんし、運用状況には注目が必要ですが、中古住宅の質を判断するうえでの1つの指標になることは間違いないでしょう。
今後、住宅広告の「安心R住宅」マークに注目してみてください。
入っておきたい「既存住宅売買瑕疵保険」
瑕疵保証検査に合格した家だけが入れる「既存住宅売買瑕疵保険」というものがあります。
検査と保障がセットになった保険制度だと考えてください。
この保険に加入することで、売主・買主ともにメリットがあります。
売主:瑕疵が見つかった場合の負担軽減、物件の安心感を高めることで資産価値が上がる
買主:各種税制優遇措置や、給付金が受けられる可能性がある
- すまい給付金(最大30万円。売主が宅建業者の場合のみ。)
- 住宅ローン減税
- 特定の居住用財産の買い換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例
- 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税特例
- 登録免許税の軽減措置
- 不動産取得税の減額措置
それぞれ、他の要件もありますので、全ての要件を満たせば利用することができます。
通常、上記の制度は中古住宅だと対象外になってしまうのですが、「既存住宅売買瑕疵保険」に入っていれば、新築住宅と同等に、対象とみなされるようになるのです。
費用は、検査で3~4万円、保険料が4万円~8万円程度が目安です。
(もちろん、建物の規模や特約の状況によって変動します。)
買主・売主いずれも加入を希望できる任意加入の保険です。
特に、売主にとっては、良質な住宅だというアピールになりますので、ぜひ加入の検討をしてみて欲しいです。
まとめ
上手に中古住宅を探すことで、無理なローンを組むことなく、快適な住まいを手に入れることができるかもしれません。
家探しをしている方は、新築じゃなきゃいけないという先入観を捨てて、中古住宅にも目を向けてみてはいかがでしょうか。
また、ご実家や今のご自宅を売りに出すときには、逆にインスペクションを行う必要が出てくると考えておいた方がいいでしょう。
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