しがらみゼロのFPブロガーMisaki(@fpmisaki2)です。
保険への加入を考えるとき、保険募集人から説明を受けるときなど、「保険には貯蓄性がある!」という理由で加入を決めたことがある方は多いのではないでしょうか。
確かに、保険によっては、掛金として支払った金額よりも多くの金額を受け取れるタイプのものもあります。
ですが、実態を理解すると、保険と貯蓄は切り離して考えた方がよさそうだ! ということが見えてきます。
今さら聞けない保険の仕組み。
しっかりチェックしておきましょう!
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原点に立ち返り、保険とは何かを考える
日本で最初にinsurance(保険)を紹介したのは、福沢諭吉です。
「一人の災難を大勢に分かち、わずかの金を捨てて大難を免れる制度」として紹介されました!
何の予兆もなく、明日急に亡くなってしまうという確率は、極めて低いですよね。
でも、もし万が一そんなことになったら、お子さまや配偶者などの「経済的損失」は計り知れないものです。
もしかしたら、生活していくこと自体が困難になってしまうかもしれません。
このような、「発生の可能性は低いけれど、発生してしまったらリスクが大きい状態」に備えて、皆で少しずつお金(=保険金)を負担することにより、負担を平準化し、リスクが発生したときの負担を軽くしよう! という、いわば相互扶助を目的としたシステムなのです。
ちなみに、大手生命保険会社と呼ばれる4社を並べてみると、
- 日本生命保険相互会社
- 第一生命保険株式会社
- 住友生命保険相互会社
- 明治安田生命保険相互会社
となっています。
1社を除いては、相互会社であることに注目してください。
これは、保険業法によって保険会社のみに許されている会社形態です。
株式会社の場合には、株主が会社の持ち主となりますが、相互会社の場合には、保険契約者が会社の持ち主ということになります 😉
このように、みんなでお金を出し合って、助け合うという考え方に立っていますので、保険会社には「収支相当の原則」というものがあります。
保険契約者全体が支払う保険料の合計と、保険会社が保険金受取人全体に支払う保険料の合計が、等しくなるようにしているのです。
これだけ見ると、「ものすごくフェアで、会社は全く儲けていないのね!」と思われそうですが、そういうわけではありません。
保険料の世界は奥が深いのです 😎
保険の掛金には、2種類ある-純保険料と付加保険料
私たちが支払っている保険料は、実は知らないところで2種類に分かれています。
1つは純保険料。まさに、保険金に充てられるためのお金です。
もう1つは付加保険料。これは、保険会社が継続するための資金に充てられます。代理店手数料や広告費、人件費、利潤などが含まれます。
一言で言えば、運営費ですね。
私たちが支払っている掛金は、全てが保険に充てられているわけではない!
これは、注目すべきポイントです。
ちなみに、この付加保険料を開示しているところは少なく、ブラックボックス化しています。
そんな中、ライフネット生命は、2008年から付加保険料の開示を始めています。
保険期間10年、保険金額3,000万円、30歳男性の場合で26%という数字が掲載されていました。
当然、公開をしていない、対面販売型の生命保険会社は、こんなものでは済まないのでしょう。
開示した当時は、生保各社は「余計なことをしてくれた」と嘆いていたようです。
この記事を見ると、2008年時点での見立てでは、大手生保との付加保険料の差は5倍にも広がっていたようです。
5倍って・・・ちょっとやりすぎなんじゃないの 👿
今はここまでではないかもしれませんが、大きな差があることは間違いないでしょう。
保険の掛金は、どうやって決まる?
ところで、いったいいくら保険金が出て行くかは分からないのに、生命保険の掛金ってどのように決めているのでしょう?
保険の掛金は、3つの予定率(予定死亡率・予定事業費率・予定利率)を使って計算される仕組みになっています。
予定死亡率とは
保険会社では、過去の死亡率の統計から、男女別・年齢別の死亡者数を予測して支払う保険金額を算出しています。
これを、予定死亡率と呼んでいます。
予定事業費率とは
これは保険会社の経費を見積もる際に使われる比率です。運営するためのコストとして見込まれる分ですね。
この比率で計算された金額が、前半で出てきた「付加保険料」になります。
予定利率とは
払い込まれた保険料の一部は、そのまま置いておくわけではなく、将来の支払いに備えて運用しています。
私たちのお金を貸し出して、保険会社が運用しているようなものです。
この点は、銀行と似ていますね。
通常、運用先は国債や地方債、社債などの公社債の比率が高めになっています。
安全性が高いと言われる資産がメインですが、保険の場合には運用期間を長く設定することができるので、それなりの利益を出すことが可能です。
いつ預金が解約されるか分からない銀行や、短期取引が多い証券会社とは異なり、時間を味方につけることができるのは、保険会社の運用の強みです。
もちろん、この運用益は、保険の掛金を払った人たちのものですので、運用益の予測を立てて、その分、保険の掛金を割り引いています。
なので、予定料率は、保険の割引率と言われることもあります。
この3つ、ポイントは、どれもこれも「予定」だということです。
予定ですから、当然差は出てきます。
予定死亡率に基づいて見積もった保険金額より、実際に支払った保険金額が少なければ、利益が出ます。
これを「死差益」と呼んでいます。
そして、予定事業費率で見積もった事業費(付加保険料)よりも、実際にかかった経費が少なければ、これまた利益が出ます。
これを「費差益」と呼んでいます。
運用が予定利率よりも高い利回りであれば「利差益」が出ますが、こちらは金利の低下の影響を受けて、古い契約の保険ではマイナスになっていることもあるようです。
「しさえき」「ひさえき」「りさえき」
声に出して読むと、呪文のようになり、何を言っているのか分からなくなりますね・・・
それは置いておいて、
保険会社の収益は、多くは死差益から生まれています。
要は、実際の死亡率より高めに見積もっているワケですね。
予定事業費率も、甘めに見積もっている会社が多いようで、こちらも利益を生み出しています。
このように、もともとの理念は、「みんなで助け合う」というものではあるのですが、やはり会社である以上、会社が儲けを出せるような仕組みになっています。
保険は、宝くじに似たようなところがあります。
当たれば大きいですが、最初に胴元が一定額を引っこ抜いている 😥
この仕組みを冷静に見れば、「貯蓄」の効果を保険に求めてはいけないことは明らかですね。
貯蓄性を求めることの限界
保険金の一部は運用されています。
もし、この運用益が、保険会社の事業費を上回るレベルで出るのであれば、プラスになる可能性があると言えるでしょう。
ですが、ご存知の通り、今は低金利の時代です。
債券中心の運用では、いくら時間が長くても、運用益が望めないことは、明らかです。
そうすると、リスク性のある商品でなければ、増やすことは難しい。
そこで「貯蓄性がある」と言って薦められるのが、外貨建て保険や変額保険と呼ばれるものです。
ですがこれらは、平たく言えば資産運用を保険会社を通してやるようなものです。
通常の運用にかかる費用に加えて、保険会社に支払う手数料が増えるだけの、高コスト商品になってしまいます。
資産運用をする際には、コストを抑えることが超重要!
なのに、その流れの真逆を行く方法です。
だったら、シンプルに自分で運用した方が、間違いなく資産を増やすことができます。
保険は保険として考え、貯蓄とは切り離して考えるべきなのは、ムダなコストが多すぎるからなのです。
まとめ-もともとの目的を忘れてはいけない
最初にお伝えしたとおり、保険の目的は、自分の力ではどうすることもできない、大きなリスクを小さく抑えるための「助け合い」です。
保険を否定しているわけではありません。
保険には、保険としての大事な使い方があるのです。
もちろん、自分で備えができていれば、保険をかける必要すらなくなります。
子どもが生まれてすぐや、守るべき家族がいるけど貯蓄が追い付いていない時、そんな時に必要な分だけ掛ければいいものだということを頭に入れておきましょう。
ものごとには、もともとの目的があります。
それを忘れてしまうと、判断を間違える可能性を高めます。
保険は保険、運用は運用と、別々に分けて考えて行きましょう!
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