しがらみゼロのFPブロガーMisaki(@fpmisaki2)です。
あまり考えたくないことですが、いつかは親と永遠の別れを迎えるときが来ます。
悲しみに暮れる間もなく、やってくるのが相続というお金の問題。
皆が納得する方法で分けられればいいのですが、遺産の分割にはさまざまな感情も絡んできて、問題が起きるケースが多いです。
家族は仲良しだったとしても、お金が引き出せずに税金が納められないというピンチを迎えることもありえます。
そして、相続税なんて、庶民には関係ない!と思っていたのは昔の話。
相続税法の改正によって、意外と身近な問題になってきているのです。
家族が仲良く過ごすためにも、相続対策は早めに始めるのが一番です。
そのためにも、正しい順序と必要な準備について、一緒に見ていきましょう。
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相続準備をする前に。相続税は、いくらから必要になるの?
相続税の計算をするときには、はじめに「基礎控除」分が差し引かれます。
この基礎控除よりも、相続財産が少なければ、相続税はかかりません。
聞いたことがあるかもしれませんが、平成27年から、この基礎控除の計算方法が大きく変わりました。
改正前後でどれだけ変わったか、比べてみましょう!
改正前 5,000万円+(1,000万円✕法定相続人)
改正後 3,000万円+(600万円✕法定相続人)
法定相続人って、いったい誰のことなの? という場合には、あわせてこちらもご覧ください。
仮に配偶者と子供2人の合計3人が法定相続人だった場合、改正前だと8,000万円の基礎控除でしたが、現在では4,800万円まで下がっています 😯
カンのいい方はお気づきでしょうが、都内に一戸建て住宅などの不動産を持っている場合、危ない金額だなぁというレベルまで引き下げられています。
実際、2015年に亡くなられた方の相続のうち、相続税の課税対象となった方の割合(=課税割合と言います)は、8.0%。
それまでは4.4%程度でしたので、大きく増えていることが分かります。
さらに、東京都に限定すると、課税割合は12.7%。
それまでは7.5%程度でしたので、やはり大幅に増えています。
だんだん、他人事ではないかもしれないと感じてきましたよね。
相続争いなんて、ドラマの話・・・じゃなかった!
2015年に、向井理さんが主演の「遺産争族」なんていう連続ドラマがありましたが、総資産10億円を巡る骨肉の争いなんていう、一般人とはかけ離れた世界のお話でした。
このように、相続争いなんて資産が多い人の問題で、私には関係ない!と思われがちなのですが、実は財産が少ない方が裁判になるケースは多いんです。
2012年に遺産分割で裁判となった割合を資産別に見てみると、
- 1,000万円以下 32%
- 1,000万円~5,000万円以下 43%
- 5,000万円超 25%
つまり、5,000万円以下が、75%を占めています。
ほとんどのケースは、普通の人たちが争っているのだということが分かります。
数百万の遺産を巡って、骨肉の争いになることだってあるんですよ 😥
もめる原因としては、
- 資産の多くが不動産で、きれいに分けにくい
- 介護が大変だったのに、その分が反映されていない
- 現金が欲しいのに、土地を渡されても困る
- 自宅に住み続けたいのに、現金化して分割することを求められる
- 相続人の配偶者や、弁護士などの第三者が入ってくることにより、問題が複雑化する
などなど、バラエティに富んでいます。
もちろんお金の問題ではあるのですが、よく見ると感情や欲によるものが大きいですね。
そもそも、遺産を公平に分けること自体が非常に難しく、ある程度は折り合いをつけながら決めていくしかありません。
極端な話、もらえる金額が1億円とか2億円とかになってくると、総額が大きすぎて細かい差が気にならなくなってくるらしいです
(私にはわからない世界のお話し💦)
ですが、1,000万円とかになると、非常にリアルな金額なので、
- 住宅ローンの繰り上げ返済ができる・・・
- 教育資金の不足分にあてたい・・・
などが頭をよぎり始め、奪い合いに発展してしまうのです。
もともと仲が悪かった家族はもちろんですが、仲が良かったはずの兄弟姉妹の間に亀裂が生まれ、口も利かない関係になってしまうなんていうことが、現実に起きてしまっています。
そんなことにならないように、親御さんが元気なうちに、しっかり対策をしないといけません!
相続対策の優先順位。節税対策が先行すると、もめるもと。
相続税を下げるための対策としては、さまざまな「特例」の活用による節税という方法があるのですが、それを考える前に、やるべきことの順番を押さえておく必要があります。
目先の税額を引き下げることよりも、もめずにスムーズに相続手続きが終えられることの方が重要です。
1番目は、現状を把握すること
まずは、財産の種類や相続税評価額、借金の有無、不動産の権利状況(抵当権は付いていないか、共有名義になっていないかなど)をしっかりと把握する必要があります。
特に、実家などの不動産は、思いがけず評価額が上がっていて、相続税を押し上げる要因になっていることもあります。
今現在の相続税評価額がどれくらいになっているのかは、確認しておくことが大事です。
そして、法定相続人は何人なのか、現在の相続税見込み額はいくらなのかという点は把握しておく必要があります。
現状が分からなければ、対策の立てようがないからです。
2番目は、家族間のコミュニケーションと、円満な関係を築くこと
元気なうちに相続の話をすることは、とっても勇気がいることだと思います。
ですが、実は最大の相続対策は、相続人どうしのコミュニケーションにより、家族の絆を結んでおくことです。
相続人(=お子さまなど)の側から話を振るのは、なかなかハードルが高いと思いますので、できれば被相続人(=親など)から話を始めて欲しいところですが、そういう話にはならないようなら、相続人の方からさりげなく考えを聞いておくといいですね。
家族それぞれの想いを聞くこと、何よりも遺産を残す人が、どういう想いで皆への配分を考えているか、という点をしっかりと共有し、話し合っておくことが大事です。
遺産はもともと持っていた方のものです。
どのような想いで託していくか? という点を決めるのは、被相続人の意思です。
でも、やろうとしていることと、受け手側のニーズにずれがあったら、本来の想いを達成することができませんよね。
ギャップを埋めるためにも、しっかりとコミュニケーションをとっておきましょう。
エンディングノートの作成なども注目を集めていますが、作ったものを自分だけで抱えておくのではなく、家族と想いを共有しておくことが大切です!
3番目は、納税資金の準備
特に、相続する遺産に不動産が多い場合は要注意ですが、相続税は「相続のあったことを知った日(=基本的には相続人が亡くなった日)」から10か月以内に現金で納めなければなりません。
期限から1日でも遅れてしまうと、無申告加算税や延滞税というペナルティが加算されてしまいます。
物納と言って、現金以外の財産で相続税を納付する方法は存在するのですが、特に不動産の物納で、税務署が定めている条件を満たすのは非常に厳しいです。
そのため、納税額がいくらくらいになりそうなのかをしっかりと把握しておき、納税用の資金を準備しておくことが大切です。
納税資金の確保の方法の1つとして、生命保険を活用する方法があります。
納税資金の準備の重要性は、知らずにその時を迎えると大変なことになります。
納税のために借金をするような事態は、避けなければなりません。
4番目は、節税対策
3番目と4番目は、同時並行の要素もありますが、優先すべきは納税資金の確保です。
そういう意味で、節税対策は一番最後になります。
実は、はじめに「節税対策」に目が行ってしまい、やみくもに対処してしまうパターンは、結構多いです。
その結果、子供たちの争いのもとになってしまったり、結果として長い目で見たら資産を減らしてしまったりと、望まない結果を迎えることも多いのです。
よくあるパターンが、アパート経営による節税対策です。
確かに、相続の時点では税金を下げることができますが、すすめられるままに地方や郊外にアパートを建設するなど、市場調査が甘いケースも多く見受けられます。
その結果、最初の数年はよくても、徐々に空室率が上がり、将来的には節税以上の赤字を生み出してしまう。
こうした危険性があることにすら気が付かないまま、目の前の利益を追いかけてはいけませんね。
不動産投資の内容自体に将来性があり、ついでに相続税対策もできる!ということであれば全く問題ありません。
ですが、相続税対策にこだわりすぎるあまり、必要のない資産を背負ってしまった場合、それを受け継ぐ相続人にとっては、負担だけがのしかかることを忘れてはいけません。
下手な相続税対策をするくらいなら、何もしない方がマシという場合もあるのです。
おわりに-家族のコミュニケーションが、一番の相続準備
相続のことを考え始めると、どうしても節税対策に目が向いてしまいがちです。
もちろん、節税のために知っておくべき知識はたくさんありますが、何よりも大切なのは、相続に向き合う順番です。
繰り返しになりますが、
- 現状を把握すること
- 家族のコミュニケーションと円満な関係を築くこと
- 納税資金の準備
- 節税対策
相続人全員が納得しなければ、遺産分割協議は成り立ちません。
遺言書があればいいんでしょ! と思うかもしれませんが、遺留分という最低限相続できる権利が法律で定められていますので、遺留分を下回るような遺産配分になっていたら、相続人は権利を主張することができちゃいます。
遺留分ってなんでしょう? という方は、こちらもあわせてご覧ください。
そして、骨肉の争いへ・・・なんてことにもならないためにも、家族のコミュニケーションは本当に大事です。
ぜひ、この順番は、しっかりと頭に入れておいてくださいね。