しがらみゼロのFPブロガーMisaki(@fpmisaki2)です。
よく、教育費はこども1人につき1,000万円以上かかると言われています。
一見、とてつもない大金のようですが、決して裕福な家庭の話ではなく、一般的にこのぐらいかかってしまうのが現実です。
特に、大学進学時には大きな金額が必要になりますので、少しでも早めからコツコツと積み立てをすることが大事です。
その際には、正しい目標額の設定をするためにも、お金の全体像が見えていることが大事です。
現在、最も金融資産を持っているのは60代以上の方々、つまり祖父母の世代です。
相続税の計算方法が変更になり、一般的なご家庭でも、相続税対策を意識することが大切な状況になってきています。
お孫さんの教育資金として、ご自身の財産を生前贈与したいとお考えの祖父母も多いのではないでしょうか。
もし、そのようなご意思があれば、それも踏まえた教育費計画を立てた方がいいでしょう。
現在、教育資金を一括で贈与する場合に、非課税となる制度が、時限的に措置されています。
この特例の期限、2019年3月末までだったのですが、あと2年は延長されることが決まりました。
延長はされたものの、少し条件が厳しくなる予定です。
なぜ、改正予定だということがわかるかと言うと、平成31年度税制改正大綱が発表されたから。
ここで発表された内容は、実質的に決定と考えてOKです。
詳しくは、こちらの記事をチェックしてくださいね!
この特例自体は、利用のメリットがある方は限られていますので、利用する/しないは、制度の概要や実際の使い方をイメージしてから決めた方がいいものだと考えています。
ただ、制度が改正されることを話題のきっかけとして、お子さまの教育費の見通しを含めて、祖父母と相談してみるチャンスにしてもいいと思いますよ 😉
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教育資金の一括贈与の非課税制度とは?
この制度は、その名のとおり、教育資金をまとめて贈与する場合には、贈与税がかからないようにするというものです。
60代以上が金融資産を多く持っている現状から、子育て世代に資産移転をしてもらい、お金を使ってもらおうという目的でできた制度です。
制度の概要をまとめておくと、
- 直系尊属(祖父母や父母)から、直系卑属(子や孫)に対して、受贈者1人につき1,500万円までを一括贈与できる。
- 教育資金は、①高等学校・大学等の学校等に支払われる入学金その他の金銭、②塾等の学校以外の者に支払われる金銭のうち一定のもの、の2種類を指す。
- 1,500万円のうち、500万円までは、②の塾や習い事などの学校以外の教育費にあてることができる。
- 一括贈与された教育資金は信託銀行等の金融機関に預けておく。
- 教育資金の領収書を信託銀行等に提出して、贈与された金銭から払い出しを受ける。
- 受贈者が30歳になった時点で、残額があった場合には、その残額に対して贈与税が課税される。
ここで言う、「教育資金」の範囲は広いです。
①の高等学校・大学等の学校に払われる教育資金には、入学金、授業料、入園料、施設設備費、入学検定料、学用品費、教科書代、修学旅行費、学校給食費など、学校教育に伴って必要となる費用であれば該当します。
②の塾等の学校以外の者に支払われる教育資金には、学習塾、テニスやスイミングスクール、家庭教師、サッカーや野球教室、ピアノやバイオリンの個人レッスン、絵画やバレエ教室、書道や茶道教室など、いわゆる習い事にあたるものにかかる費用が該当します。
ただし、②にあてられる上限は500万円までです。(1,500万円の内数ですので、注意してください。)
さらに、2019年4月1日以降に、新規に信託をする財産については、次の条件が加わります。
- 受贈者の前年の合計所得が1,000万円をこえる場合には、対象外となる。(2019年4月1日以降)
- 受贈者が23歳に達した日の翌日以降は、上記②の教育資金は適用の対象外となる(2019年7月1日以降に支払われる教育資金)
- 贈与者が、管理契約終了の日以前に死亡した場合、その死亡の日における残額は、受贈者が相続により取得したものとみなされる(2019年4月1日以降に贈与者が死亡した場合)
23歳以降は、大学や大学院の学費、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練の受講費、だけがこの制度の対象になるという意味合いです。
さらに、今までは30歳になるまでは、そのまま利用し続けることができたのですが、その前に贈与者が亡くなった場合には、相続税の課税対象財産になっていくことになります。
改正情報については、詳しい情報が判明し次第、随時更新していきます。
教育資金の一括贈与の非課税制度を利用する場合のポイント
この制度を利用する場合には、押さえておくべきポイントがいくつかあります。
実際に利用する場合の手続きについて、きちんと理解しておかないと、意外と手間がかかってしまって後悔することもあります。
最初の計画が肝心
一度贈与すると、教育資金以外には使うことができません。相続税対策だからと、上限額まで贈与をしてしまうと、使い切れなくなって困ってしまう可能性が出てきます。
教育資金の計画をしっかり立てたうえで、必要な金額だけを贈与するようにしましょう。
また、受贈者を特定するので、お孫さんが複数人いる場合には、バランスを考えて金額を決める必要があります。
1人のお孫さんに多額の贈与をした結果、他のお孫さんにも同額の贈与をすることになってしまい、結果として老後生活資金が枯渇した・・・なんていうことになってはいけませんので、親族全体のバランスを考えつつ、しっかりと計画を立ててください。
引き出し方法について理解しておこう
贈与時にお金を預ける先は、信託銀行などの金融機関です。
金融機関に対して、教育資金を支払った証憑を提出すると、お金を引き出すことができます。
大手の信託銀行であれば、特に手数料はかかりませんが、場合によっては手数料がかかる金融機関もありますので、しっかり確認してから信託する金融機関を決めましょう。
また、お金を引き出すために、ご両親はそれなりの頻度で金融機関へ通うことになるはずです。
通いやすいところに支店がある信託銀行を選んだ方がいいですね。
基本的には、領収書を提出して、事後に支払いを受けます。一時的には、生活費などから支払いを行う必要がありますので、注意が必要です。
口座引き落としで領収書がない場合には、記帳された通帳を用いることが多いようです。
何の費用かが明確でない場合には、学費の内訳が載った振替案内通知を合わせて添付したり、場合によっては学校から証明書の提出が必要になる場合があります。
必要書類については、早めの段階で、しっかりと信託銀行に確認しておきましょう。(けっこう面倒だとは思います・・・)
原則として、一度立て替え払いをしてから引き出すことになりますが、学費等の金額が大きなものについては、事前引き出しや直接払い込みが可能な場合もありますので、対応内容も含めて、信託銀行を選ぶ際にはきちんと確認しておきましょう。
銀行からの振り込みや、コンビニ払いの場合、支払った時に発行される領収書が使えることが多いですが、紛失したり、記載項目に不足があった場合には、大学であれば一般的に、納入証明書が発行してもらえます。
手元の領収書では不十分とされた場合には、大学の事務室に相談してみましょう。
その際には、「教育資金の一括贈与引き出しに使う」旨をきちんと伝えておくと、必要な情報が入った書類がもらえるでしょう。
事務室の窓口になる方ではなく、別の部門で作成することになります。
窓口の方は制度を知らない可能性もありますので、経理部門などにきちんと伝わるように、目的を明確にしておきましょう。
払い出し手続きについて確認しておこう
口座の名義は、受贈者(=お孫さん)となります。
そのため、受贈者が20歳未満の場合には親権者が払い出し手続きの対象者ですが、20歳以上になると、受贈者自身が手続きをしなければならない場合があります。
お孫さんがしっかりしていて、手続きを任せても安心なら構わないのですが、払い出した学費を親に渡さず他の目的で使っちゃう 😥 という不安がある場合には、20歳以降も親権者が手続きできるかどうか、事前にきちんと確認してから信託銀行を選ぶといいでしょう。
使い切れなかった場合のことは、最初に考えておこう
1,500万円まで贈与が可能ですので、大学の学費までを考えて贈与されるケースも多いでしょう。
ですが、お孫さんが大学への進学という道を選ばない可能性もありますね。
贈与したお金は、教育資金として使うことに限定されていますので、このような場合には使い切れなくなるリスクがあります。
残ったお金には贈与税がかかりますし、教育費のつもりで贈与した祖父母と親との間にトラブルが生まれる可能性もあります。
お孫さんの進路が変わるかもしれないことは考慮に入れて、使い切れなかった時のことも含めて、祖父母と親は話し合いをしておいた方がいいでしょう。
教育資金の一括贈与の非課税制度のメリットは?
教育資金の一括贈与の非課税制度を利用するメリットがあるのは、どのような方なのでしょうか。
資産が多くて相続税の課税対象となる方が、相続税対策として使う
平成27年から相続税の基礎控除が減額されましたので、都市部に戸建てを持っているような方の場合には、十分に相続税の課税対象となる可能性が出てきています。
相続税の概要については、こちらをチェック!
資産が多い高齢者の場合には、ご自身の生活費は十分に確保したうえで、早めから次世代(=子や孫、ひ孫)への資産移転をしておくことも検討が必要です。
教育資金の一括贈与の非課税制度の場合には、「教育資金でないと引き出せない」仕組みが出来上がっていますので、他の用途で使われてしまう心配がないのは、お金を贈る側としては安心材料になるはずです。
用途を限定した贈与をしたい場合には、検討の余地があるでしょう。
お孫さんがまだ小さくて、元気なうちに高校や大学の教育費援助ができそうもない
そもそも、教育費を支払いがある都度、贈与する場合には、贈与税はかかりません。
生きていて、判断能力がしっかりある状態で、つど学費を支払ってあげる分には、贈与税はかからないのです。
それなら、こんな制度不要じゃないか! と思うかもしれませんね。
ですが、それなりに資産があり、かわいい孫の大学進学費を出してあげたいが、それまで生きていられるか? 認知症になってしまわないだろうか? という不安がある場合、この制度を利用しておけば、確実にお孫さんの教育費を援助してあげることが可能なのです。
ひ孫への教育費援助をしておきたい
お孫さんまでなら、ご自身が元気なうちに、その都度贈与をするという方法で十分かもしれません。
ですが、ひ孫となると、そうはいきませんね。
既にひ孫が生まれている、あるいはもうすぐ誕生予定という場合には、ひ孫のために贈与をしておくという方法も1つです。
ひ孫が大学生になるころには、判断能力が低下していたり、亡くなっている可能性も高いですから、教育資金として使ってもらえて、かつ節税になるというメリットがあります。
教育資金の一括贈与の非課税制度のデメリットは?
あまり詳しい説明を受けずに、この非課税制度の存在を耳にすると、「お孫さんのためになる」とすぐに手続きをしたくなる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、実は人を選ぶ制度ですので、ご自身にあっているかどうか、しっかり確認してから決めることが大事です。
ここでは、デメリットを見ておきたいと思います。
教育資金の払い出し手続きが煩雑
お金を引き出すためには、塾や学校に支払った領収書等を、いちいち整理して提出しなければなりません。
実は、教育資金として認めてもらえるかどうかの判定ルールが細かいので注意が必要です。
例えば、習い事の楽器代であれば、指導者を通じて購入していれば認められるが、自分で買った場合には認められないというようなケースがあります。
大学の教科書の場合には、教科書が明示されているシラバスを提示したり、大学生協で購入したものであるなど、学校や指導者の指示により準備したことを明確に証明することが求められるようです。
そのため、一度提出に行っても認められず、不足する書類を準備する手間が発生することもあります。
どのように購入すれば認められるのか、事前にルールを把握しておく必要があるので、管理上は煩雑になることが多いです。
そのようなことを知らずに贈与をしてしまうと、せっかくの好意なのに裏目に出てしまう可能性もありますので、事前のコミュニケーションが必要です。
親族間のバランスを考えないと、家族が不仲になることがある
自分の子が複数人いるときに、特定のお孫さんだけに大きな金額の贈与をしてしまうと、兄弟間の仲が悪化することがあります。
お孫さんがいる家庭、お孫さんがいない家庭、独身の方など、兄弟の状況も様々でしょう。
でも、お孫さんがいる家庭だけが優遇されたと感じたら、その他の兄弟は面白くない・・・なんてことになり兼ねないのです。
全員に均等に贈与をするならともかく、だれか特定のお孫さんだけに贈与するような場合には、贈与を受けない子供さんご家族ともしっかり話し合っておいた方がいいでしょう。
お金の問題は、コミュニケーションをしっかりとっておかないと、それまで仲が良かった親族関係を壊す危険性があります。
兄弟だけの問題ではなく、それぞれの配偶者も含めた家族の思いが入り混じってきますので、「うちの子たちは分かってくれる」という思い込みは、とっても危険です。
贈与や相続対策全般について言えることですが、資産配分と考え方の共有は、慎重に行った方がいいでしょう。
まとめ-そこまでまとまった資金の贈与は必要か?
教育資金の一括贈与非課税の特例は、メリットがある方が限定的です。
相続税対策をしなければいけないほどの財産がある場合には有効ですが、それほどでもないけど、ちょっと余裕があるから援助したい・・・という場合には、通常の贈与の非課税枠110万円の範囲内で、贈与をするのでも十分でしょう。
その際、
- お孫さん1人につき、年間80万円上限、総額400万円までの贈与をしておき
- ジュニアNISAで運用しておく
というのも、1つの選択肢だと思います。
非課税メリットもあり、簡単には引き出せないので、大学進学資金にあてやすいです。
そういう意味でも、祖父母の想いを形にしやすい方法かもしれませんね。
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