しがらみゼロのFPブロガーMisaki(@fpmisaki2)です。
投資家向けに女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を販売・運営していた、株式会社スマートデイズが、オーナーに対して賃料の支払いを停止し、民事再生法の適用を受けたという事件がありましたね。
オーナーには、大手企業に勤める会社員や弁護士、医者などの高所得者が多く、高金利で数億円のフルローン融資を受けていたことから、被害が広がる結果となりました。
この時に話題になったサブリース。
どのようなものか、イメージはできていますでしょうか?
サブリースという方法は、実は相続税対策として薦められることが多いんです。
そのため、「相続が発生して調べてみたら、サブリースの不動産があった」なんていうパターンで、知らず知らずのうちに巻き込まれる可能性を秘めています。
自分は不動産投資になんか興味がないから、関係ない・・・とは言い切れません。
サブリースの特徴や問題点について、しっかりと確認しておき、想定外の負の資産を背負わないように注意しましょう!
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サブリースの仕組みと、かぼちゃの馬車問題が広がったワケ
サブリースとは、ひと言で言えば、不動産の又貸しです。
実は、宅建士の勉強をしていると、転貸に関連する事項がちょこちょこ出てきます。
最初のうちは、転貸なんてレアケースなんじゃないの? と不思議に思っていましたが、サブリースの話を聞いて腑に落ちました。
転貸は、決して珍しいケースではないのですね。
アパート建築から、運営までの流れを簡単にまとめてみます。
- 建築会社がアパートを建築する。
- 建築される物件は、オーナーが購入する。
- その建物をアパート建築会社(またはその子会社)が一括して借り上げる。
- アパート建築会社(またはその子会社)は、本当にその部屋に住む入居者を集める。
- オーナーは、管理費や維持費などのコストが引かれた残額を、賃料として受け取る。
サブリースでオーナーがメリットを感じる要因としては、
- 一定期間の家賃保証がある。
- オーナー自身の管理負担が少ない。
という2点に尽きるでしょう。
わずらわしい管理業務をお任せにしておいても家賃が入ってくる。
しかも長期間にわたって減らずに安定的に入ってくる。
これはおいしい話じゃないか!!
そう感じてしまえば、普段仕事をしている会社員や、高齢の方々でも(安易に)手を出しやすくなりますよね。
でも、この2点だけが提示された場合、世の中そんなに甘くない!と冷静になる人も多そうな気がします。
「かぼちゃの馬車」の場合には、社会貢献という要素もちらつかせてオーナーの感情を揺さぶっていました。
地方から上京してきた若い女性を救うというコンセプトがあり、
「入居者の就職をあっせんし、採用されればその企業から紹介手数料をもらう」
という仕組みを導入している。
だから空室があっても経営は成り立つし、事業を行うことは若者を応援することにもつながるのだ!
なんていう説明を受けていたんですね。
自分も儲かるし、社会貢献度が高いというのは、ある意味キラーフレーズです。
そのため、不安感が消し去られ、即決をしてしまう高所得者が増えてしまったという側面があります。
お金を儲けるということに、ちょっとした罪悪感を抱いている人にとっては、投資を正当化して、後押しをしてくれるという効果もありました。
このように、プラスアルファの要素を乗っけることにより、冷静な判断ができなくさせるパターンがあるので、要注意です。
相続税対策とサブリースは、仕組みとしては相性がいいけれど・・・
冷静な判断を失いがちなプラスアルファの要因として、最大のものが相続税対策としての活用です。
2015年1月に、相続税の基礎控除が引き上げられたことが引き金となり、相続税対策としてアパートを建てるオーナーが急増しました。
相続税対策として使われる理由は、不動産が持つ各種の税制優遇を受けられるからです。
具体的に、どんなものがあるか見てみましょう。
土地の相続税評価額が下がる
貸アパートが建っている土地は、相続税法では貸家建付地という評価を受けます。
貸家建付地の場合、土地の評価額は一定の計算式で減額されます。
自用地価額✕(1-(借地権割合✕30%✕賃貸割合))
借地権割合が6割で、全ての部屋が貸し出されている場合には、60%✕30%✕100%=18%分、評価が下がるという効果があります。
評価が下がれば、当然納めるべき相続税が下がります。
更地のままで相続するより、相続税の面からはおトクなわけです。
建物の相続税評価も、30%OFFになる
建物の相続税評価額は、固定資産税評価額と同額になるのが基本です。
ですが、賃貸中の建物は30%OFFになりますので、これまた相続財産を減らす効果があります。
小規模宅地等の特例により、更なる減額が可能
居住用の宅地や、事業用の宅地も持っている場合、上限面積の計算を行う必要がありますが、貸アパート用の宅地のうち、最大200㎡までは、50%OFFの特例を受けることができます。
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借金は、相続財産から差し引くことができる
貸アパートを建てるための借り入れが残っている場合には、相続財産から差し引くことができます。
相続する時点では借入金があっても、その後回収してプラスに転じる見込みがあるのだったら、相続税を下げた状態で資産の移転が可能なことがメリットになるわけです。
生前に建物だけ贈与して、家賃収入を移転することができる
土地を持っている親が貸アパートを建てたのちに、建物だけを子に贈与したとします。
この場合、建物に付随する「家賃収入」は、子のものになります。
親が家賃を受け取り続けていたら、最終的には相続財産になってしまいますが、この方法を取れば、相続財産が増えるのを防ぐことができちゃいます。
さらに、この時の土地の扱いを「使用貸借」という、親が子にタダで貸しているよ! という方法にしておきます。
これだと、親が持つ土地の評価は「貸家建付地」のままキープとなります。
その後、相続が発生した段階では、
- 実際に相続が発生したときに、譲り受けた時と同じ相手に貸していれば、減額ありの「貸家建付地」で評価
- 譲り受けた時と、賃借人が変わっていれば、減額なしの「自用地」で評価
するというお約束があります。
貸アパートなんて、入居者が入れ替わるのは当たり前のことですよね。
ここで、満を持して登場するのが、サブリースです。
サブリースにしておけば、借り手はサブリース業者のままで変わりません。
そのため、相続がいつ起きたとしても、「貸家建付地」のままで引き継げちゃうんです。
ちょっと余談になりますが、
FP1級の資格を取るにあたっては、最後に実技試験と呼ばれる面接形式の試験を受けるのですが、その時の設題例にある相談者のパターンとして、不動産の節税対策にお悩みの方が出てくることが多いんです。
そういう時に、この裏技(?!)をしっかり答えられるように、一生懸命勉強するのですが、学びながらなんだかモヤモヤするわけです。
もちろん、試験の際には「貸アパートの将来性も含めて、総合的に判断する」という条件付きで回答するのが一般的です。
とは言え、相談者の状況をしっかり把握しておかないと、FPがミスリードをしてしまう危険性があるのではないだろうか・・・なんてことを考えてしまったのも事実です。
相続税対策をメインに据えてしまうと、総合的に見て何が大事か?という判断の軸がぶれてしまう可能性があります。
貸アパートなどの不動産投資を行う場合には、相続税に強い税理士の意見を聞くだけでなく、その物件の収益性や事業計画をきちんと把握し、自分自身がその不動産の将来性を判断できているかどうかがカギになるということは、忘れてはいけないポイントです。
サブリースの問題点-借主は法で守られている
サブリースの場合には、オーナーは貸主、業者が借主という関係性が成り立っています。
実は、これがくせもの 😡
なぜなら、借主は法律上、守られる立場にあるのですから。
家賃保証が永遠に続くわけではない
通常、サブリースの契約書には、家賃保証期間は5年や10年などと期限が定められています。
そして、期限後は「経済情勢の変動等に応じて見直す」と明記されています。
保証期間中はトラブルにならなくても、10年後に賃料減額請求がやってきて、始めて問題に気が付くことも多いのです。
借地借家法では、「借主が家賃の減額請求を行うことができる」と定められている
サブリースでは、「30年一括借り上げ」など、景気がいいキャッチフレーズがかかげられている場合があります。
ですが、家賃が一定であるという保証はどこにもありません。
借地借家法という法律があるのはご存知でしょうか?
もともと、この法律は「賃貸借契約では、借主の立場が弱いことが多いので、法律で保護してあげましょう!」という背景から生まれています。
貸すのは不動産業者、借りるのは一般の人。
だとすれば、知識も経験も豊富な業者の方が、有利な立場ですよね。
そのため、基本的に借主を保護する考え方に立っています。
ところが、サブリースの場合には、貸すのは一般の人、借りるのは不動産業者と、立場が逆転してしまいます。
- 借主である業者は、家賃相場が下がったら、家賃の減額請求ができる
- 借主である業者は、中途解約が容易にできる
- 貸主であるオーナーは、正当事由が認められなければ一方的に解約することができない
このような図式が成り立ってしまい、本来ならば守られるべきオーナーが不利な立場に立たされてしまうという側面は、しっかり理解しておくべきでしょう。
修繕費や原状回復費という、追加負担がやってくる
サブリース契約時には見込んでいなかった、原状回復費用や修繕費が発生する可能性があります。
その場合、費用は所有者であるオーナーが負担することになります。
管理を業者に任せてしまっている分、本当に必要な修繕費かどうかの判断自体が難しく、そもそも不要なものを要求されてしまっている事例もあるようです。
まとめ-楽して儲けられるほど甘くない
サブリースが全て悪だというわけではありません。
契約内容をしっかり確認することで、上手に利用できる可能性はあります。
ですが、一番の問題点は、「管理運営を業者に丸投げしているので、オーナーには不動産経営のノウハウが全く身につかない」という点にあるように感じています。
貸アパートの価値を維持するためには、物件の状態や周辺環境、入居者の状況などを自分自身で確かめたうえで、さまざまな工夫や苦労することが必要なはずです。
決して、大家業は楽して儲かるようなものではありません。
不動産投資という言葉が使われますが、内容としては、不動産経営だと考えておくべきです。
サブリース契約をする場合には、メリット・デメリットをしっかり確認したうえで、相続人とも相談のうえで慎重に対応することをお薦めします。
そして、相続資産にサブリース物件が含まれている場合は、要注意です。
オーナーが全くノウハウを持っていなければ、それを相続で受け継ぐ方は、ますます何も分かっていない状態でしょう。
相続税対策を目的にして、サブリースの貸アパートを建てている場合、「団体信用生命保険」に加入していないケースも多いです。
相続税の引き下げ効果を狙うという理由が建前ではありますが、「団信の分、金利が上乗せされることを嫌う」という側面もあります 😥
家賃がコンスタントに入るならと、軽い気持ちで相続してしまうと、保証された家賃は減額され、借入金も残っているし、売却したくても買い手がつかない・・・なんてという悪夢が待ち受けている可能性もあります。
法定相続人の中に、不動産経営をされている方がいる場合には、早めの段階で契約形態をしっかりと確認しておくといいでしょう。
そして、相続人の中で、誰が事業を引き継ぐのかは早めに決めておき、ノウハウの移転も進めておくことが大事です。
現状を把握した結果、状況によっては、相続放棄も検討しなければいけなくなるかもしれません。
相続が発生してから慌てると、さらに事態を悪化させる可能性があります。
早めに状況を把握しておき、冷静な対応を行いましょう。
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