生前贈与の味方なの? 相続時精算課税制度のメリット・デメリットを知っておこう

相続と贈与

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しがらみゼロのFPブロガーMisaki(@fpmisaki2)です。

 

起業するための開業資金がいる、マイホームを建てたい、お子さまが私立大学医学部に進学する、結婚をすることが決まって準備資金が必要になる・・・など、人生においては大きなお金が必要になる場面があると思います。

 

そんなとき、ご両親や祖父母がある程度資産を築き上げている場合には、まとまった資金を援助してあげたいと考えることがあるでしょう。

 

そんなとき、ネックになるのが税金です。

親から子へ、祖父母から孫へというような親族間の資金援助であっても、「贈与」にあたりますので、贈与税がかかります

 

この贈与税、相続よりも負担が大きい仕組みになっているのですが、60代以上に資産が集中している現状もあり、国としても資産を若い世代に移転して使ってもらいたい・・・という思いから、いくつかの優遇制度が設けられています。

 

その中の1つである相続時精算課税制度の概要と、メリットやデメリットを見ていきたいと思います。

一見、めちゃくちゃ強力な節税策に見えるのですが、一筋縄ではいかないこの制度。

ちゃんと内容を理解しておくことが大事ですよ!

 

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通常は、贈与税の基礎控除は110万円

基本的には、1月1日~12月31日の間に受けた贈与の総額から、基礎控除額110万円を引き、残った額に税率をかけて贈与税が計算されます。

 

贈与税の税率は、特例税率と一般税率の2種類に分かれています。

特例税率:20歳以上の者が直系尊属(親・祖父母など)から贈与を受けた財産

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

 

一般税率:上記以外の方から贈与を受けた財産

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

 

例えば、25歳の息子が、父親から2,000万円の贈与を受けたとしましょう。

課税価格 2,000万円-110万円=1,890万円

納税額 1,890万円✕45%-265万円=585.5万円

こうやって具体的に計算してみると、なかなかの納税額であることが分かりますよね。

こんなに払わなきゃいけないなら、贈与なんてするのやめようって思っちゃいます 😥 

 

相続時精算課税制度だと、2,500万円まで贈与税は発生しないけれど・・・実は後回しにしているだけ

このように多額の税金がかかってしまうと、まとまったお金を贈与するのも躊躇してしまいますよね。

 

ところが、相続時精算課税制度を選ぶと、生前に贈与をした際には、2,500万円までの贈与には贈与税がかかりません。

さらに、2,500万円を超えた分に対しては、一律で20%で、贈与税が計算されます。

 

最初に出てきた贈与税の税率表と見比べてみてください!

税率20%って、けっこう太っ腹なのがわかります。

Tsubasa
よーし、相続時精算課税制度を使って、たくさん贈与してもらおう!
Misaki
親のお金をアテにしすぎちゃだめよ!

それに、そもそも税金を払わなくてよくなったわけじゃないのよ。

 

相続時精算課税制度を選んだ場合、最終的には相続の際に「相続財産」として課税の対象となります。

 

「今」支払う贈与税は大幅に減らすけど、お亡くなりになって相続が発生したときには、相続税の計算対象となりますので、

税が免除されるわけではなく、納税を先送りする制度だと思っておいてください 😉 

 

この相続時精算課税制度は、だれでも利用できるわけではないですし、いくつか大事な条件があります。

 

贈与者ごとに選択する

例えば、父からの贈与は相続時精算課税制度、母からの贈与は通常の贈与(暦年贈与)というように、贈与者ごとに個別に選択します。

もちろん、父の分も母の分も、両方で相続時精算課税制度を選択することも可能です。

 

贈与者の年齢制限がある

贈与をする年の1月1日において60歳以上の方が対象となります。

ただし、住宅取得等資金として、相続時精算課税制度を利用する場合には、贈与者の年齢制限はなくなります。

 

住宅取得等資金については、これとは別の特例制度も用意されています。

詳しくは、こちらをご覧ください!

 

受贈者の条件がある

次の条件を全て満たす必要があります。

  1. 贈与者の直系卑属である推定相続人、または孫であること
  2. 贈与をする年の1月1日において20歳以上であること

 

直系卑属である推定相続人というのは、原則として子のことです。

要は、20歳以上の子か孫ならOKだよってことですね。

 

税務署への手続きが必要

この制度を選択する場合には、税務署に手続きをする必要があります。

贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に、

  • 贈与税の申告書
  • 相続時精算課税選択届出書
  • 住民票の写し
  • 登記事項証明書

などの提出が必要となりますので、税務署に必要書類を確認のうえ、もれなく手続きを行う必要があります。

 

一度選んだら、撤回することができない

同一人物からの贈与額を累積していき、2,500万円までは贈与税を非課税とするという制度ですので、一度選んだら撤回することができません。

贈与者の相続が発生したときに、その時までに受けた(生前の)贈与が相続財産に加算され、相続税の計算対象となるのです。

 

適用後は、年間110万円の基礎控除枠を捨てることになる

相続時精算課税制度は、お亡くなりになって相続が発生するまでの間で、合計2,500万円までは、贈与税が非課税になります。

その代わり、暦年贈与は使えなくなるので、毎年110万円の基礎控除は使えないわけですね。

 

極論ですけど、相続時精算課税制度を使ってから、20年後に相続が発生した場合、毎年コンスタントに暦年贈与をしていたとしたら、110万円×20年=2,200万円の基礎控除が使えたという考え方もできます。

 

今すぐにまとまったお金を渡すべきなのか、少しずつの贈与でもいいのかなど、条件に応じて使い分けることが大事ですね。

 

 

相続時精算課税制度は、使い方が大事。どんな場合にメリットがあるの?

くれぐれも誤解がないようにしていただきたいのは、贈与税が非課税だからと言って、税金が免除されるわけではないということです。

それを踏まえつつ、利用するメリットは何か? ということを考えてみましょう。

 

早期にまとまった財産を移転することができる

贈与の段階では、2,500万円までが非課税になりますので、早い時期にまとまった資金を使えるという点はメリットと言えます。

とにかく今、資金が必要という場合には、検討の余地があるでしょう。

 

賃貸マンションなどの収益物件を贈与すれば、相続財産を減らす効果がある

賃貸マンションを贈与した場合、その後の家賃収入は受贈者(=もらった人)の財産となります。

 

もし、親御さんが収益性のある不動産を所有し続けていると、どんどん相続財産が膨らんでいきます。

ところが、その不動産を子に渡してしまえば、贈与後の利益は子の財産にできちゃいます。

 

既に相続財産が多い方の場合には、相続財産の増加を抑える効果がありますので、相続税対策として活用するのも1つです。

 

値上がりが見込まれる財産を贈与する場合は、得をする

不動産や株式などの財産を贈与した場合には、贈与した時点での評価額で持ち越され、相続税の計算が行われます。

 

現時点より、相続時には価値があがることが見込まれる財産であれば、早いうちに相続時精算課税制度で贈与をしておけば、相続のときの評価額を下げる効果が期待できます。

まぁ、これについては、狙い通りになる保証はありませんけどね・・・ 😥 

 

不動産にしてから生前贈与することで、評価額を下げる効果がある

現金等の金融資産で贈与するのではなく、親が居住用の住宅を購入し、その後、相続時精算課税制度を利用して、住宅を子に贈与するという方法もあります。

 

不動産は、土地は公示価格の8割、建物は建築費の50%~70%が、相続税評価額になるなど、もともとの評価額が減額されているため、金融資産で贈与するよりも財産の評価額を圧縮する効果があります。

 

相続税評価額の概算については、こちらをご覧ください。

 

相続時の争いを防ぐ効果がある

相続税の計算上は、相続財産として加算されますが、すでに贈与された財産は受贈者のものとして確定しています。

そのため、生前贈与済みの財産を、どう分割するかで争うことはありませんので、遺産分割をめぐるトラブルを回避することが可能です。

 

ただし、法的な話と親族間の感情の部分は別の問題ですので、生前贈与をする際には、贈与を受ける人だけではなく、他の親族も含めてきちんと話をしておくことが重要です。

 

相続時精算課税制度のデメリットを知っておこう

ここまでお読みいただければ、非常に利用者を選ぶ制度だということは分かっていただけたと思います。

安易に、今の税金が安ければいいや! で選んではいけませんね。

さらに、どんなデメリットがあるかも、しっかり見ておきましょう。

 

贈与税の申告の手間が増える

暦年贈与と呼ばれる、通常の贈与の場合には、贈与税が発生するような贈与があった場合だけ、税務署へ申告すればOKです。

ですが、相続税精算課税制度を選んだ場合には、贈与額の大小は関係なく、贈与税の申告が必要になります。

累積して計算するのですから、当たり前なんですけどね。ちょっと面倒です。

 

小規模宅地等の特例が使えない

メリットとして、不動産にして贈与すれば、評価額が下げられるというものを挙げました。

ですが、相続の際に居住用の宅地を受け継ぐ場合には、なんと相続税評価額が80%OFFになる、小規模宅地等の特例制度があるのです。

 

制度の詳細は、こちらをあわせてご覧ください。

生前に土地の贈与を受けてしまうと、小規模宅地等の特例が受けられなくなりますので、どちらがより良い選択なのかは、税金面と実際の利用の面から総合的に考える必要があります。

 

不動産の移転にかかるコストは上がる

不動産の贈与の場合には、他にも登録免許税不動産取得税もかかります。

 

相続であれば、登録免許税は0.4%、不動産取得税はかかりません

ですが、贈与の場合には、登録免許税が2.0%にあがりますし、不動産取得税も必要になります。

 

そのため、不動産の移転にかかるコストは、相続時に比べると高くなるのです。

 

相続時に値下がりをした財産も、贈与時の評価額で課税される

メリットであげた事例の裏返しですね。

贈与を受けた時には価値があった不動産や有価証券が、相続の時点には暴落していたとしても、贈与があったときの評価額で税金が計算されます。

例えば、贈与時の時価が100万円だった株が、相続時には1万円になっていたとしても、100万円の相続財産として計算されるのです。

 

怖いですね・・・

株式の贈与で相続時精算課税制度を使うとしたら、自分の会社の非上場株式を後継者に譲るパターンだけにしておかないといけません。

 

生前に贈与を受けた財産は、物納ができない

相続税は、現金で一括納付をしなければなりません。

ただし、どうしても現金で納めることが困難な場合、「物納」と言って、不動産などで納付することが認められる可能性があります。

 

相続時精算課税制度で贈与を受けた財産については、物納をすることが、そもそも認められておりません。

このことは、理解したうえで選択した方がいいでしょう。

 

まとめ-相続時精算課税制度は、しっかり理解して使いこなす必要がある

相続時精算課税制度は、一見、税負担が軽くなってうれしい制度に見えますが、慎重な取り扱いが必要だということがお分かりいただけましたでしょうか。

生前贈与や相続に関する税務は、さまざまな特例や複雑な要件があり、何が自分にとってベストなのか?は、個々の資産状況や家族関係によってしまいます

 

自分自身での安易な判断を避けて、贈与や相続の実務経験が豊富な税理士に相談しながら進めるのが間違いありません。

 

一方、節税という観点に立ちすぎると、今の自分たちにとって必要なものが何なのかという点や、家族や親族の想いがどこにあるのか、という点が抜け落ちてしまう危険性があります。

そういう事態を防ぐためにも、税理士に相談するだけではなく、自分自身でも基礎知識くらいは身に付けておいた方がいいのです。

 

贈与と相続は一体の問題です。

こちらもご覧いただき、家族間のコミュニケーションを図ってくださいね。

 

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大空みさき
はじめまして、大空みさきです。

「お金のことを知ることが、実は最強の投資術。」
ふつうの会社員だった私が、生命保険の値上がり宣告をきっかけにFPの資格を取って、たどり着いた結論です。

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